大淀開発株式会社は、同社が施工する東九州自動車道芳ノ元地区改良工事で、のり面省力化吹付工法「スロープセイバー」を採用した。従来の人力によるモルタル吹付に代わり、専用のアタッチメントを装着したバックホウを用いた機械施工で、大幅な省人化や工期の短縮、安全性の向上、施工管理のICT化を図っている。
スロープセイバーは、吹付アタッチメントとバックホウを用いた機械施工とLiDARを用いた施工管理で、大幅な生産性の向上が期待できるモルタル吹付工法。日特建設株式会社(東京都中央区)が開発し、2022年7月に国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)に登録された。登録番号はKT-220070-A。
従来手法のようにモルタルプラントを設けず、ミキサー車からコンクリートポンプを通じて、バックホウに装着した吹付アタッチメントにモルタルを直接供給する。これと合わせて、LiDARのリアルタイム計測で得られるヒートマップを色分けして可視化し、オペレーターは吹付厚を確認しながら作業を行うことができる。
大容量のコンクリートポンプを使用することで、人力施工の約3~5倍の吹付能力となり、大幅な工期短縮を実現する。機械化とICTを用いた集中操作で、吹付中の施工人員は4人程度に抑えられ、工期短縮の効果と相まって大幅な省人化が可能となる。
吹付アタッチメントは、直高で約17mまで、勾配約45度以上に適用可能。人力の吹付作業が無くなり、現場の安全性も向上する。LiDARから得られた計測データを出来形管理に活用でき、吹付厚をリアルタイムで管理することで材料ロスを軽減する。
大淀開発は、芳ノ元トンネルの頭部排土を目的とした工事の法面工にスロープセイバーを採用。10月21日には、国土交通省や建設会社の技術系職員を対象とした現場見学会を開催した。説明会では、監理技術者の前村圭介氏と日特建設の石垣幸整氏が工事や工法の概要を説明し、機械施工による吹付作業の模様などを見学した。
前村氏は、現時点で全国的にも活用実績が少なく、九州内の公共事業では今回が初めて採用であることを説明。その上で、大幅な省人化や日施工量の増加に伴う工期の短縮、吹付作業のICT化を連携することで合理的な施工が可能になるとして、見学会が担い手不足への対応や働き方改革の推進の一助になればと期待を込めた。