九州・沖縄地区の高校生が互いの溶接技術を競う「九州地区高校生溶接技術競技会」の宮崎会場が、8月21日に宮崎市内で開かれた。新型コロナウイルス感染症の感染状況を踏まえ、今年度の九州大会は各県での分散開催に変更。宮崎会場では、県立日向工業高等学校と県立小林秀峰高等学校の生徒8人が熱い火花を散らした。
高校生を対象とした溶接技術競技会は、各県溶接協会と日本溶接協会九州地区溶接技術検定委員会が主催し、各県の持ち回りで毎年開催しているもの。若者の技能離れが深刻化する中、次世代を担う高校生に溶接技術への関心を高めてもらうとともに、ものづくりに関する技術の継承や交流の場とすることを目的としている。
13回目を数える今年の大会は、本来であれば各県の代表選手が本県に集い、2日間にわたって競技や交流事業を行う予定だったが、各地で猛威を振るう新型コロナウイルスの影響を考慮し、各県それぞれでの開催に切り替えた。本県からは、日向工業高校機械科の2~3年生4人、小林秀峰高校機械科の1年生4人が出場した。
開会式で挨拶に立った一般社団法人宮崎県溶接協会の碕山裕和理事長は、こうした開催経緯を選手に説明。他県の生徒との交流事業の中止を「非常に残念」と述べる一方、「大会に向けて、皆さんがしっかりと練習に取り組む姿勢を拝見し、とても頼もしく思う。これからも挑戦を続け、自らの技能を高めてもらいたい」と呼び掛けた。
来賓挨拶で宮崎県高等学校教育研究会工業部会の長友健祐会長は、「皆さんが技術を磨くことが、産業界の更なる発展に繋がる」と述べ、練習の成果を十二分に発揮してもらうようエールを送った。宮崎県工業技術センターの藤山雅彦所長は、「競技会の経験を活かし、立派な産業人・社会人として成長して」とメッセージを寄せた。
選手宣誓で日向工業高校の生徒は、「コロナの中、大会が開催できるよう運営してくださった方々、私たちを支えてくださった方々に感謝している。昨年度は大会が開催されず悔しい思いをした。選手一同、その無念を晴らせるよう、日々の練習で磨き上げてきた技術を発揮し、全力で優勝を目指すことを誓う」と力強く述べた。
競技の課題は、厚さ9㍉の中板を下向きで溶接するもの。溶接方法は被覆アーク溶接、継手の形状はV形開先突合せ。競技時間は、電流調整やタック溶接、本溶接、清掃、競技終了の申告までを含めて30分間。選手達は、日頃の練習を思い出しながら、真剣な面持ちで課題に取り組み、全員が制限時間内に作品を完成させた。
競技終了後には、評価員が作品の出来映えや競技中に注意すべきだった事項などを総評した。6月から毎日1時間程度、大会に向けて練習を重ねてきた小林秀峰高校の生徒は、「練習してきたおかげで、これまでのベストは出せたと思う。ただ、他の選手の作品を見て、もっと頑張らないといけないと感じた」などと話した。
今後は、各県の代表選手の作品について、8月~9月に外観審査や曲げ試験を行い、競技中の姿勢等も踏まえた上で、団体賞及び個人賞の入賞者を決定する。個人賞の優勝者は、今年11月に神奈川県で開催される第21回全国大会(高校生ものづくりコンテスト)に、九州地区の代表として出場する。
当日はこのほか、株式会社池上鉄工所(延岡市)の松田拓也専務取締役が「溶接アートの世界」と題して講演。19年度の全国溶接技術競技会で2位にあたる「優秀賞」を受賞し、卓越した溶接技能を持つ九州溶接マイスターに認定されている同社の小野毅氏らが作成した溶接アートの制作過程などを映像で紹介した。