日向市の旭建設株式会社(黒木繁人代表取締役)は3月26日、同社が施工する高鍋大橋耐震補強工事の現場で、MR(複合現実)及びVR(仮想現実)を活用した体験型の見学会を開催した。参加した国土交通省や高鍋町の職員が、現場空間にCIMモデルを重ね合わせて表示できるMR技術や、安全教育に活用しているVR技術を体験した。
当該工事は、高鍋大橋のP6橋脚を対象に、巻立て工や護床工、仮設工を施工するもの。見学会では、現場代理人の白木紀章氏が見学会の開催趣旨を、また、担当技術者の酒井希実氏が工事概要や進捗状況を説明し、品質証明員の河野義博氏と監理技術者の黒木裕介氏が同社に於けるMR及びVRの取り組みについて紹介した。
同社が安全教育ツールとして活用している株式会社仙台銘板の「LookCa」(ルッカ)は、建設業の死亡災害要因の上位を占める墜落災害や飛来・落下災害、土砂崩壊災害、重機災害等の様々なシチュエーションを、VRシステムを搭載したヘッドマウントディスプレイとヘッドフォンで仮想体験することができる。
見学会の参加者は、専用機器を装着し、コンテンツの中から選んだ災害を仮想体験した。監理技術者の黒木氏は、被災者の視点で災害の発生状況や要因、再発防止策を確認できるため、熟練技能者のほか、入職して間もない現場作業員や日本語に不慣れな外国人労働者の安全意識も高めることができるなどと説明した。
一方、橋脚の補強工事で活用しているMR技術は、株式会社インフォマティクスが提供する「GyroEyeHolo」(ジャイロアイホロ)。マイクロソフト社のディバイス「ホロレンズ」を使い、肉眼で捉えた現場の現実空間に、実寸大の図面データや3Dモデル等を重ね合わせて、立体的に表示することができる。
見学会では、橋脚を前にした参加者がホロレンズを装着し、データ上の墨だしの位置と実際の補強筋の配置状況を見比べながら、システムの機能や精度を確認した。品質証明員の河野氏は、MR技術を活用することで、誰にでも墨だしが可能であることや、従来の方法と比べて作業効率が大幅に向上した検証結果などを説明した。
監理技術者の黒木氏は「最新のICT技術を率先して導入することで、その動きが業界全体に拡がり、現場の生産性や安全性の向上につながれば」と期待を込めた。参加した国交省の職員は「i-Constructionを推進する中で、各社が様々な新技術に取り組んでいる。良いものは積極的に取り入れて欲しい」と話した。