宮崎県病院局は10月31日、県立宮崎病院再整備に係る基本設計の概要等を明らかにした。新病院の規模は鉄骨造(免震構造)、地上8階・塔屋1階、延床面積4万8139m2。基本構想段階から3100m2程度増やし、2病棟のスタッフステーションを一体化した「2in1病棟」などの新方式を採用する。一方、基本構想時点で約165億円と見積もっていた建設費に関しては、資材費・人件費の高騰や床面積の増加などを理由に、271億円に増大すると試算し直した。
経年による既存施設の老朽化・狭隘化を解消すると共に、災害対策の強化や診療機能の向上を図るため、県立宮崎病院(宮崎市北高松町)の再整備に取り組むもの。現病院敷地内に本館や立体駐車場を新築するほか、既設の精神医療センター及び付属棟を改修で整備する。新病院の基本設計は日建・コラムJVが担当した。
基本設計では、昨年10月~ことし1月に大まかな部門配置や病棟構成などを検討。1月~4月に各部門のブロックプランや専有面積を検討し、病棟ごとの診療科や病床数、各諸室数などを決定した。4月~8月には約40部門へのヒアリング調査を実施。これを踏まえ、最終的な平面計画を作成し、10月までに成果品を完成させた。
新病院の建築概要によると、構造形式は鉄骨造(免震構造)、階数は地上8階及び塔屋1階、延床面積は4万8139m2。建物高さは40.5mで、地業は場所打ちコンクリート杭とする。病床数は510床。大雨等による浸水被害への備えとして、1階床レベルを周辺地盤から約1.5m嵩上げする。
現病院北側の駐車場エリアに新病棟を配置。敷地東側に立体駐車場、現病院跡となる敷地南側に平面駐車場を整備し、駐車台数600台程度(うち立体駐車場が約280台)を確保する。新病院の1~3階に診療部門、4階に管理部門、5~7階に病棟部門、8階に機械部門を配置し、屋上には広域搬送のためのヘリポートを整備する。
2病棟のスタッフステーションを一体化した2in1病棟方式は、1フロア4看護単位で構成。スタッフステーションの直近に個室、ウイング部分に4床室を配置し、看護動線の短い急性期対応型病棟とする。南北2つのスタッフステーションを一体化し、ミキシングルームやユーティリティを共有化することで業務とスペースの効率化も図る。
このほか、▽熱源に電力・ガスなど複数エネルギーを利用▽複数台の非常用発電機を設置▽高性能複層ガラスやLED照明、人感・照度センサーを採用▽BEMSでエネルギー管理▽停電時72時間程度のオイルと10日分以上の医療ガスを備蓄―するなどして、基幹災害拠点病院としての安全性強化と環境負荷の低減に取り組む。
基本構想時点で165億円としていた建設費(本体及び外構工事費)に関しては、資材費・人件費の高騰や床面積の増加、地盤面の嵩上げ、地盤改良などを理由に、現時点で271億円に増大すると試算し直した。近年の公的病院建築事例を踏まえ、1床あたりの単価を5075万3000円、1m2あたりの単価を53万6000円と設定する。
関連経費は、設計費が7.8億円(基本構想時6.8億円)、改修工事費が16億円(同4.3億円)、解体工事費が11.4億円(同9.3億円)、立体駐車場が7億円、準備工事費が2.6億円など45.1億円。医療機器整備費等の73.7億円を加えた総事業費は390億円程度になると試算する。
他方、新病院の実施設計に関しては、▽機能優先で計画すべき病院設計において、設計過程や意図を十分に理解している▽大きな特徴である2in1病棟などの設計意図を他の設計者が理解するためには、多大な時間や労力、コストを要する―などの理由から、基本設計の受託者である日建・コラムJVと随意契約を締結する予定でいる。
今後の事業スケジュールによると、今年度下期から来年度にかけて実施設計を行う方針。先行して整備する立体駐車場は29年度に着工・完成させる。新病院の建設工事は30年度~32年度に行い、移転期間を挟んで33年度の開院を目指す。このほか、32年度~34年度に既存施設の改修や解体、外構工事を行う予定でいる。