国土交通省九州地方整備局は、2月16日に福岡市内で開かれた社会資本整備審議会道路分科会九州地方小委員会で、計画段階評価の審議対象となった「九州横断自動車道延岡線(蘇陽~高千穂)」の対応方針案を示した。災害時に於ける代替路としての利用や早期の整備効果が望めることなどから、これまでに示していた3つのルート帯の中から「別線整備案(南ルート)」を対応方針案として提示し、これを妥当する委員の了承を得た。
計画段階評価は、公共事業の実施過程の透明性を一層向上させる観点から、地域の声を聞きながら、新規事業採択時評価の前段階で事業評価を行うもの。地方支分部局が評価を受けるために必要な資料を作成し、学識経験者等の第三者で構成する委員会等の意見を聴いた上で、概略ルートや構造などの対応方針を決定する。
16日に開かれた委員会では、事業化に向けた計画段階評価の対象区間である「九州横断自動車道延岡線(蘇陽~高千穂)」について審議を実施。これまでの審議結果や地元自治体への意見聴取の結果等を踏まえた対応方針案について、辰巳浩委員長(福岡大学工学部社会デザイン工学科教授)をはじめとする委員が審議を行った。
九州横断自動車道延岡線は、熊本県上益城郡御船町と宮崎県延岡市を結ぶ総延長約95㎞の路線。北方延岡道路など14.9㎞が開通済みで、高千穂日之影道路や嘉島JCT~矢部ICなど26.3㎞が事業中。審議対象となった山都町と高千穂を結ぶ蘇陽~高千穂(延長約20㎞)は全線のほぼ中央に位置している。
これまでの会合の中で、当該路線の政策目標に①災害時にも機能する高信頼性ネットワークの確保②第3次救急医療施設への速達性・走行性向上③移動の速達性・安全性の向上による雇用・定住の促進④歴史・文化的資源を活かした回遊性の向上による広域的な観光振興支援⑤走行性・速達性向上による産業活動の支援―の5項目を設定。
これを踏まえた既存の道路ストック活用や別線整備等による対策案として、全線バイパス整備による別線整備案(北ルート・南ルート)と現道改良案1ルートの計3ルート帯を委員会に提示。各ルート案の比較検討結果や地元自治体・団体・企業・地域住民への意見聴取の結果を踏まえ、対応方針案を「別線整備案(南ルート)」とした。
集落へのアクセス性と高速性・定時性を確保する南ルートの延長は約22㎞(自動車専用道路、設計速度80㎞/h)で、整備費用は約900~950億円。意見聴取で、集落へのアクセス性や救急医療施設・物流施設への連絡性を重視する計画を望む声が多く寄せられたことから、4箇所程度のインターチェンジを設ける考えでいる。
南ルートに関しては、災害時の代替路機能の確保や救急医療施設までの搬送時間の短縮、生活拠点から市街地までの移動時間の短縮、現道の線形不良箇所及び防災点検要対策箇所を回避することによる走行性・安全性の向上、産業拠点までの移動時間の短縮など、前述の全ての政策目標を満足することができる。
会合で説明を受けた委員は、九州地方整備局が示した対応方針案を妥当と判断。必要な機能を十分に確保すると共に、環境面に関しても対策を検討するよう求めた。九州地方整備局は、今回の審議結果を踏まえ、防災上危険な箇所が多く、現道の線形が悪いなど緊急性の高い区間から、順次計画を進めていく考えを示している。