▲砂子邦弘社長
国土交通省が2017年度に創設したi―Construction大賞の国土交通大臣賞に砂子組(本社・北海道奈井江町)が輝いた。受賞現場は全国第1号のICT土工現場となった道央圏連絡道路千歳市泉郷改良工事。砂子邦弘社長に受賞の喜びと、これまでと今後の取り組みなどを聞いた。
―受賞についての感想を。
「北海道内企業として北海道開発局長表彰の受賞機会はあるが、国土交通大臣賞の受賞機会は、めったにないこと。大変うれしく思う。そして、現場を担当した者の励みにもなる。現場担当者は、これまで局長表彰を受賞したことがなく、受賞に向けて以前から頑張ってきた。そして今回、局長表彰と大臣賞を受賞できたので、担当者は私以上にうれしいのではないか。発注者からもいろいろとアドバイスをいただき、協力のおかげと感謝している」
―全国第1号の現場であり見学会などが多かったと聞くが。
「約40回の見学会が開かれ、約800人が来場した。現場の職員もその対応のために勉強することで成長できたと感じている。また、現場見学会に参加した学生が『自分もICT施工がやりたい』との動機で当社への入社希望もあり、大変うれしく、そしてありがたく思っている」
―ICTなどへの取り組みは。
「9年前から情報化施工に取り組んできた。国交省が情報化施工を打ち出した時、当時の土木部長から『どうしても情報化施工がやりたい』と言われたのがきっかけ。費用などの課題もあったが、将来的にはIT化の路線からも3次元化へというのは、業界的にも間違いなくそうなると判断した。そして、生産性が向上するなど見事に効果が出た。その後、下請けの現場でも導入した実績がある」
「当社の組織としては昨年春、営業部を企画営業部に組織変更し、その中にICT施工推進室を設置した。そこには土木の技術者や女性職員が在籍し、3次元化や視察対応など現場のフォローを行っている」
「約2年前からは建築部門にも導入している。具体的には、タブレットを利用して自分たちの現場に適合するような項目を作る研究や、ICTの機材を使った掘削を実験的に行っている。品質確保や安全施工にもつながり、協力会社との打ち合わせもスムーズになるなど利点はたくさんある」
―現在の課題や将来をどう見ているか。
「現時点では、まだ部分最適で全体最適ではないことが課題だ。ICTを活用すると、その活用した部分だけは(生産性が)上がる。しかし、ICTを利用するのは現場全体の20%から30%程度。土工量が現場のほとんどを占めている場合は、間違いなく生産性は上がる。また、技術者の育成と資機材の高価格、ドローンなどの外注料金が高いという課題もある。女性を含めた技術者育成に尽力していきたい。発注者に対しては、積算や歩掛かりの条件をこれまでも改善してもらってきたが、さらに進めてほしい」
「土工量が多い現場で生産性が向上するとなると、大規模ほ場などの農業土木で活用が効果的だと考えている。現在、空知地方で実験していて、軟弱地盤で難航しているが、ぜひ克服したいと思っている。さらに農業機材もICT化されていて、農業生産者と農業土木が合体したインフラ整備も近い将来やってくるだろう。新しい技術で、空知の農業を下支えしたい。そして、これからも週休2日といった働き方改革にも間違いなくつながるi―Constructionを推進していきたい」((北海道建設新聞社=小林一則、地方建設専門紙の会)
*砂子邦弘(すなご・くにひろ)57年3月28日生まれ。94年に社長に就任し、16年2月から空知建設業協会会長。同年3月から北海道建設業協会理事となり、同協会の建設業情報化推進委員会委員長も務めている。