宮崎市庁舎問題検討委員会は、耐震性や分散化・狭隘化等の課題を抱える庁舎のあり方に関する検討内容をまとめ、11月27日に開会した12月定例市議会に報告した。課題を踏まえた一定の方針案として、推定耐用年数である平成40年までは必要な維持管理を行いながら本庁舎を活用し、その間、基金等の財源確保に努めつつ、長寿命化や現地建替、移転新築を含めた庁舎のあり方を更に検討することとした。
今月で竣工から54年を迎える本庁舎に関して、今後の庁舎のあり方を総合的に検討するため、ことし5月に係長級職員13人で組織する庁舎問題検討ワーキングチームを設置。議会や市民に議論してもらう材料としてワーキングチームで検討を重ね、宮崎市庁舎問題検討委員会の専門部会・幹事会・委員会で協議し、検討内容をとりまとめた。
報告では、現庁舎が抱える機能面の課題として、防災拠点施設としての耐震性や洪水による浸水の可能性、庁舎の分散化・狭隘化などを例示。特に、大地震が発生した場合に構造体の十分な機能が確保できない可能性があることや、洪水で大淀川が氾濫した場合に浸水の恐れがあること、庁舎の分散化で内部が複雑化していることなどを挙げた。
これらの課題を整理した上で、解決に向けた大きな方向性として「更なる長寿命化」「民間ビル等の賃借」「庁舎の建て替え」について検討。ただし、「民間ビル等の賃借」に関しては、国や県所有の庁舎で賃借可能なスペースがないことや、中心部に現庁舎の面積を確保できる不動産がないことから「現実的に難しい」と位置付けた。
また、「更なる長寿命化」の検討では、既存庁舎を構造躯体のみの状態にした上で、本庁舎の耐震補強や本庁舎~第四庁舎の大規模改修及び耐震改修を実施し、設備や仕上げを一新することを想定。既存駐車場の立体化や工事中に必要となる仮設庁舎等の費用を含め、長寿命化に要する改修費用の総額を約134億円と見積もった。
一方、「庁舎の建て替え」に関する検討では、現在の本庁舎~第四庁舎、教育委員会、子ども未来局親子保健課を基本に、消防局や上下水道局を含めたパターンで庁舎の規模を検討。総務省起債対象事業費の算定基準や他自治体の事例を参考に、延床面積で約4万5000m2~5万m2、駐車場550台程度が必要になると想定している。
仮に移転新築する場合の移転場所に関しては、既存のインフラ等を活用できることや分かり易い場所であること、公共交通機関等によるアクセスが容易であること、他の官公署と連携しやすいことを前提条件に、都市計画マスタープラン上の中核地点(橘通周辺・宮崎駅周辺・中村町周辺)で選定を進めることが適当との見方を示した。
これらを踏まえ、現在地での建て替えと移転新築する場合の工事概要についてパターンごとに検討。現在地での建て替えは▽新庁舎2棟~3棟▽立体駐車場▽平面駐車場▽橘公園等再整備―を組み合わせた3パターン、移転新築は▽新庁舎▽平面駐車場▽立体駐車場▽緑地等―を組み合わせた2パターンを想定した。
従来型の直接建設方式で各パターンを発注した場合の概算事業費は、現在地での建て替えで約231億円~262億、移転新築で約214億円~252億円と試算。ただし、近年の公共事業で民間資金や技術を活用する公民連携(PPP)が採用されている事例があることを踏まえ、「市にとって最適な事業手法を選定する必要がある」とした。
今後は、今回まとめた「庁舎のあり方に関する検討内容」をたたき台に、市議会や有識者・関係団体等の代表で組織する市民懇話会、庁内の庁舎問題検討委員会で慎重に協議及び検討を重ね、庁舎のあり方に関する方針を決定することとしている。