国土交通省は10月25日、土地所有者の所在把握が困難な「所有者不明土地問題」について議論する国土審議会の特別部会を開き、所有者不明の土地に土地収用の特別措置を講じる方針を提案した。道路事業や河川事業など恒久的に土地を利用する事業では、反対者がいないことなどを条件に収用手続きを簡素化。都道府県知事に裁定の権限を与えるとともに、審理手続きを省略することも検討する。
特別措置の対象となる所有者不明土地は、既に判明している所有者に土地利用や補償への反対はないが、不明者の意思確認ができない土地。反対者が存在したり、家屋などが存在するケースでは、現行の収用制度で対応する。
対象事業については、権利者を保護し、権利者の意見を聞く収用委員会による手続きを簡素化。通常の収用制度では、収用委員会が補償額などの裁決を行うが、特別措置では都道府県知事にこの権限を移し、損失補償などについて権利者が意見を述べる審理手続きの省略も認める。
一方、土地収用制度の対象とならない「公共的事業」については、原状回復を条件に一定期間の利用を認める特別措置も検討する。具体的には、広場、移動式コンサートホール、保育園の仮設園舎、工事用仮設道路について、都道府県知事が利用権を設定できるようにする。