国土交通省など８省が、社会資本の老朽化対策に高い効果を発揮する技術開発を表彰している「インフラメンテナンス大賞」で、受賞技術４５件が決まった。内閣総理大臣賞にはＦｒａｃｔａ Ｊａｐａｎの「上下水道事業のＤＸ～ビッグデータ×ＡＩによる管路リスクの予測診断」を選んだ。大臣賞は１２件。１月１６日に総理大臣賞と各省大臣賞、１月２７日に特別賞と優秀賞の表彰式を開く。
インフラメンテナンス大賞は、国内の優れた技術を表彰し、メンテナンス分野の技術開発を後押しするために国交省と関係省庁が合同で行っている。今回で８回目。２０２４年５～７月に応募を受け付け、３０２件の応募者の中から４５件を選んだ。受賞部門別の内訳は、総理大臣賞１件、各省大臣賞１２件、特別賞７件、優秀賞２５件。
このうち、日向市の株式会社内山建設（内山雅仁代表取締役）は、「ＭｉｎｅＣｒａｆｔ×防災―遊びから学ぶインフラ未来創造プロジェクト」で優秀賞を受賞した。子ども達に馴染みのあるＭｉｎｅｃｒａｆｔを活用し、自らの街をバーチャル空間に再現することで、子ども達が楽しみながら地域インフラへの理解を深めることを可能にした。
さらに、作成したＭｉｎｅＣｒａｆｔモデルを基に、津波シミュレーションプログラムを開発。子ども達の視点で災害リスクを可視化し、防災意識を高める「遊びと学び」を融合した取り組みは、次世代の「国土強靭化の担い手」「防災リーダーの育成」「地域全体の防災力向上」に貢献する独創的かつ実践的な取り組みと高く評価された。
受賞企業とテーマは次のとおり。
■総理大臣賞
〔国交省〕▽Ｆｒａｃｔａ Ｊａｐａｎ＝上下水道事業のＤＸ（ビッグデータ×ＡＩによる管路リスクの予測診断）
■大臣賞
〔総務省〕▽ＮＴＴデータ＝業務ＤＸロボットｕｇｏ（ユーゴー）を使ったデータセンター設備点検業務の自動化／遠隔化▽伸浩技建＝トンネル覆工展開図自動作成システム
〔農水省〕▽筑後川下流域農業開発事業促進協議会＝ＣＡＰＳ（先行排水情報共有システム）の導入によるクリーク先行排水の広域化促進▽香川用水土地改良区＝地域住民と一体となった農業水利施設の維持管理▽大石建設＝サブマリンクリーナー工法による水質環境に配慮した係留施設や水域施設のメンテナンス
〔経産省〕▽中国電力ネットワーク＝Ｍｏｂｉｌｅ Ｍａｐｐｉｎｇ Ｓｙｓｔｅｍを活用した配電設備の点検業務高度化による効率化▽東邦ガスネットワーク＝ガス用ダクタイル鋳鉄管を対象とした非開削入替工法「ＳＴＲＥＡＭ工法」とその関連技術の開発
〔国交省〕▽パシフィックコンサルタンツ＝新潟県三条市の社会資本に係る包括的維持管理業務（嵐北地区）▽ＲＥＩＭ産学連携コンソーシアム＝ＫＯＳＥＮ型産官学プラス地域共同インフラメンテナンス人材育成システムの構築▽東洋建設＝港湾コンクリート構造高機能型塗装「ワンダーコーティングシステムＷ－ＭＧ」
〔環境省〕▽最終処分場技術システム研究協会＝廃棄物最終処分場の機能検査者育成
〔防衛省〕▽ニチレキ＝耐流動性を高めた舗装技術（エプロンの補修事例）
■特別賞
〔総務省〕▽エイチ・シー・ネットワークス＝大津石山テレビ中継局にて新工法による短時間での送信アンテナ更新工事
〔文科省〕▽玉川学園総務部管財課＝教育現場とインフラメンテナンスの連携による技術力向上
〔農水省〕▽大分県土地改良事業団体連合会＝新技術（ドローン）を活用した農業水利施設の管理省力化検討
〔経産省〕▽九州電力＝特別高圧ケーブルのオンライン遠隔常時監視技術の確立
〔国交省〕▽別所砂留を守る会＝先人たちが築いた“砂留”のメンテナンスを通じて土砂災害から地域を守る
〔環境省〕▽ジェイエムエス＝草津白根山殺生河原火山ガス防災システムのメンテナンス取組
〔防衛省〕▽ジオ・サーチ＝地面からスキャニングし正確な地下の３次元デジタルデータを提供「地下インフラ３Ｄマップ」
■優秀賞
〔農水省〕▽赤城西麓土地改良区＝ボールポイントロッドとマーカーロケーティングシステムを活用したバルブの操作性向上の取組▽各務用水土地改良区＝土地改良区インフラメンテナンス１５年の模索と挑戦▽滋賀県土地改良事業団体連合会＝農業用ため池の適正な管理と保全に向けたサポート体制の構築▽寺谷用水土地改良区＝４３０年にわたり「寺谷用水」を維持管理してきた農民共同体「井組」の歴史と未来への継承▽宮川用水土地改良区＝インフラメンテナンスを人的資本経営で向上（人材戦略マネジメントからインフラメンテナンスへ）▽漁港漁場新技術研究会衛生管理研究部会＝荷さばき所の機能保全点検マニュアルの作成及びＬＣＣ低減に資する製品の開発
〔経産省〕▽宇宙航空研究開発機構＝宇宙開発等電力インフラを支えるトライアングル体制構築と保安高度化・省力省人化両立▽大阪ガスネットワーク＝旧管入替工事に伴う非開削装置の開発
〔国交省〕▽滋賀県建設技術センター＝３６０度カメラとウェアラブルカメラによる地方自治体の施設管理の効率化・高度化▽玉名市役所土木課＝予防保全型の橋梁メンテナンスへの早期移行を実現した現場主体の構築モデル（玉名市モデル）▽東亜建設工業＝水中ドローンを活用した岸壁調査工事における効率化の取組▽日本線路技術＝ＡＩ活用等による主要線路設備全ての劣化状態自動判定の実現▽東日本旅客鉄道＝ＰｏｗｅｒＡｕｔｏｍａｔｅを活用した整流器・蓄電池スマートメンテナンス効率化▽岡山県立岡山工業高等学校＝産官学で取り組む『岡山道路パトロール隊』▽内山建設＝ＭｉｎｅＣｒａｆｔ×防災―遊びから学ぶインフラ未来創造プロジェクト▽仙台市水道局＝データから未来を導く～ＡＩを活用した将来の「ヒト」「モノ」「カネ」の見える化～▽平城宮跡管理センター＝おぎの美術館▽愛亀＝道路維持における安価な道路損傷度調査技術の開発▽構研エンジニアリング＝トンネル点検模擬訓練システムＴＳＴ▽日本工営＝東京国道管内における緑地管理ＤＸの推進▽太平洋セメント＝ダクタルフォームおよびＲＦＩＤ腐食検知システムによる河川護岸の補修・維持管理の高度化▽ガイアート＝インフラメンテナンス国民会議で拡がるセルフ予防保全「ニンジャシール工法」▽西日本旅客鉄道＝省力化施工及びメンテナンス作業性向上を目指した盛土ホームドア基礎の開発▽東日本旅客鉄道＝踏切用再生リチウムイオン蓄電池の導入▽東日本旅客鉄道＝視覚障害者誘導タイルの簡易修繕。
《受賞企業の一覧》