宮崎県は、水産試験研究の高度化や効率化、運営体制の合理化に向けて、水産試験場施設整備事業に本格着手する。開会中の2月定例県議会に提出した2023年度2月補正予算案に、水産試験場の研究機能と宮崎県水産振興協会の種苗生産機能を一体化した、増養殖技術高度化のための施設・設備の設計費として1億5997万円を盛り込んだ。
現在の水産試験研究体制は、宮崎市青島の水産試験場(本場)のほか、内水面資源やチョウザメ養殖の種苗生産等に係る試験研究を行う内水面支場(小林市)、高度な漁業人材を育成する高等水産研修所(日南市)、22年に新船が就航したみやざき丸(前同)、優良種苗の生産機能を高度化する水産振興協会(延岡市)など。
水産試験研究分野で、スマート水産業や水産資源の利用管理に関する技術開発、放流・養殖用優良種苗の生産技術開発、ニーズに即した水産加工技術の開発が求められている一方、現在の水産試験場や水産振興協会の共通施設は老朽化が進んでいることから、水産試験場(本場)の機能を高等水産研修所や水産振興協会に統合・再編する。
統合・再編に向けて県が示した基本計画案では、研究・教育機能の強化を図るため、水産試験場の資源・経営流通部を統合した「水産研究・教育センター」(仮称)を、日南市の高等水産研究所に設置する。みやざき丸と連携した研究機能や高度な資源・海況分析機能を備え、研究機能の強化にも資する研究棟を新たに整備する。
また、水産加工業者が商品開発にチャレンジするために必要なHACCP対応の水産加工オープンラボも新設するが、関連機関との連携も踏まえて詳細を検討する。
一方で、水産試験場の増養殖部を併設した「水産研究・教育センター増養殖支場」(仮称)を、延岡市の水産振興協会に設置する。閉鎖循環システムや調光・調音システムなどの高度な飼育設備を有する育種研究棟(研究施設)と高度飼育棟(親魚養成・種苗生産施設)、自然導入方式の取水設備、作業棟、管理棟を新たに整備する。
補正予算案にはこのうち、水産振興協会に設置する水産研究・教育センター増養殖支場の施設・設備の設計費を盛り込んだ。基本設計をメインに、一部は実施設計も行う。設計業務の発注時期や発注形態に関しては、庁内での協議等を踏まえて決定する。
新設する育種研究棟は、優良人工種苗や環境に強い海藻などの育種技術開発を行う高度な研究施設。高度飼育棟は、養殖用人工種苗の周年出荷を可能とする高度な親魚養成・種苗生産施設とする。取水設備には、従来より維持費が低減する自然導入方式を採用し、管理棟には執務室や環境測定室等、作業棟には作業場や冷凍冷蔵庫等を備える。
県では、こうした施設整備を通じて、試験研究機能の高度化や効率化を図り、環境変化に強い海藻の造成や優良種苗の放流による豊かな日向灘の再生、自然環境に左右されにくい陸上養殖の進展、最新技術を活用した効率的に稼げる操業の展開、本県水産物の特性を生かした水産加工品によるフードビジネスの進展などを実現する。