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県営住宅再整備事業、セミナーで構想概要説明 宮崎県

 宮崎県・地域PPPプラットフォームが10月12日に開いたセミナーで、宮崎県は宮崎市及び延岡市で計画している県営住宅整備事業の構想概要を説明した。経年劣化が進む既存団地の建て替えを行うにあたり、PFI事業を導入する場合の発注方法や事業規模の設定、余剰地の取り扱いの考え方について、民間事業者に意見を求めた。

 セーフティネットとしての公営住宅の充実に向けて、県は経年劣化が進む3団地(宮崎市内2団地、延岡市内1団地)の建替に係る基本構想を2022年度に策定するとともに、PFI導入の可能性調査を実施。今後、基本構想や可能性調査の結果を庁内のPFI検討会議に報告し、事業計画に係るコンセンサスを得る予定でいる。

 セミナーでは、県土整備部建築住宅課の担当者が、事業発案に向けたの構想検討段階、公民連携の可能性調査段階にあることを説明。管理戸数や入居者数の推移、築年数等を踏まえ、今後さらに需要が減少し、空き住戸の増加が懸念されることや、建替・改修が必要な住棟が集中し、予算の確保や事業量の平準化などが課題であることを示した。

 その上で、対象3団地の再整備に係る現時点の構想概要を説明。延岡市内の団地に関しては、計画戸数を現在の354戸から270戸程度とすることや、想定される余剰地面積が約3600㎡であること、周辺に商業施設や小学校、子育て施設、病院等が立地していること、周辺の市営住宅で団地の集約建替が行われていることを説明した。

 一方、宮崎県住宅供給公社が開発した宮崎市内の大規模団地に関しては、計画戸数を330~340戸程度(現510戸)としていることを説明。周辺に商業施設、小中学校、子育て施設が立地していることや、対象地周辺に於いて戸建・集合住宅のエリアと利便施設が計画的に配置されていること、余剰地の発生が見込まれることを説明した。

 また、JR宮崎駅の東側に位置する既成住宅地内の中規模団地に関しては、計画戸数を235戸程度(現235戸、うち140戸は整備済)とすることや、周辺に商業・教育・子育て・病院・介護といった利便施設が多数立地していること、周囲1㎞圏内に公営住宅がないこと、余剰地の発生が見込まれることを説明した。

 これらの再整備事業にPFIの導入を想定した場合の業務範囲に関しては、県営住宅の運営及び維持管理に指定管理者制度を導入していることから、他の県営住宅との提供サービスの統一化などを念頭に、▽設計業務▽施工業務▽工事監理業務▽入居者移転支援業務▽余剰地活用業務―を含めたBT方式が適当とするイメージを示した。

 セミナーでは、民間事業者との意見交換に期待することとして、PFI事業を導入する場合の発注方法や事業に参画しやすい環境づくり、余剰地活用を事業範囲に含めるか否か、余剰地を含めた場合の条件設定などを挙げた。

■山田町のプール、施設転用など構想

 セミナーではこのほか、▽山田一堂ヶ丘公園プールの今後の利活用に関する検討事業(都城市)▽鉄道公園整備事業(高千穂町)▽都市公園における公民連携事業に向けた取組(宮崎市)―について、各市町の担当者が事業に対する意見や提案を求めた。

 このうち、都城市の山田一堂ヶ丘公園プールに関しては、経年に伴う施設の老朽化や施設利用者の減少、営業期間が年間で2カ月程度であることなどを課題に掲げ、山田地区の地域振興に繋がる活用法を検討していることを説明。施設転用の可能性に加え、周辺の公園施設等と連携した活用方法について、意見・提案を求めた。

 旧山田町が掲げた開発構想に基づき整備された山田一堂ヶ丘公園プールは、1995年の営業開始から築28年が経過。敷地面積は約8000㎡で、管理棟(木造約70㎡)や更衣室(木造約200㎡)の付帯施設を備えるほか、周辺にはホール数日本一のパークゴルフ場や合宿等に利用できるかかし館、大型遊具や多目的広場などがある。

 セミナーでは、他県に於けるレジャープールの転用事例として、スケートパーク専用施設や釣り堀として利用している事例を挙げ、これらを既存のプールに適用した場合のメリットや課題を提示し、利活用に関する意見を求めた。市は、当該案件に興味を持つ事業者向けの現地案内を実施しているほか、個別に質疑等も受け付けている。

■高千穂鉄道公園化、事業規模縮小も

 一方、高千穂鉄道跡地公園化は、2008年に全線廃線となった高千穂鉄道の鉄橋改修や周辺の公園化等を行うことで、観光施設に転換するもの。21年度に策定した基本計画では、従来方式で事業を実施した場合の公園整備費(整備期間6年、調査・設計・整備費)を約43億、維持管理運営費(30年間)を約47億円と試算する。

 町は、施設整備や維持管理運営費等を利用者から得ることで、後世への負担とならいよう、PFI方式による事業実施を想定する。公共性の高い施設はBTO方式のサービス購入型、収益の考えられる施設はBOO方式の独立採算型をイメージする。

 現計画の整備範囲のうち、県道7号エリアには駐車場(台数266台、面積1万1233㎡)や進入路(橋梁及び道路)、休憩施設、トイレ、バス停等を計画。整備費は約17億円を見込み、BTO方式のサービス購入型の適用を視野に入れる。

 高千穂鉄橋に関しては、点検通路を改修して歩廊化することを計画。橋梁の補修や歩廊製作、耐震補強等の整備費を約12億円、維持管理運営費を約11億円と試算し、RO方式のサービス購入型の適用を想定している。

 収益施設や観光案内窓口、芝生広場等の整備を計画する天岩戸駅エリアにはBTO方式のサービス購入型(収益施設はBOO方式の独立採算型)、アスレチックや芝生広場、収益施設等のほか、既設トンネルを活用した体験型アトラクション等の整備を計画する大平エリアと大平山トンネルは、BOO方式の独立採算型の適用を想定する。

 ただ、基本計画に基づく施設整備や完成後の運営・維持管理に多額の費用が必要となることから、県道7号エリア及び天岩戸駅エリアを整備しないケースや、天岩戸駅エリアの整備範囲を一部縮小するイメージも示したうえで、現在、サウンディング型市場調査に参加を希望する民間事業者からの申し込みを受け付けている。

 調査では、①事業イメージ②対象地・対象施設の活用イメージ③事業方法④収支見込(事業採算性)⑤経営計画(事業期間・賃料等)⑥対象地等の潜在的な可能性⑦事業化の課題・問題点⑧事業規模(予算規模)⑨地域の活性化に繋がる取り組み⑩その他(滞在時間等)―について提案を求める。詳細は町のホームページで確認できる。

■公園の公民連携で市場調査

 宮崎市は、橘公園をはじめとする都市公園等の公民連携事業に向けた取り組みとして、9月から実施しているサウンディング調査の内容を説明した。締切を設けない随時受付の調査と位置付け、公園に活力や賑わいを創出できる幅広いアイデアを広く民間事業者から募集。希望者はトライアル(実証実験)として実際に公園を活用できる。

 募集対象は、公園緑地課が管理する全ての都市公園。特に事業可能性が高く、提案を期待する公園に橘公園や阿波岐原森林公園、今後整備する今村近隣公園を掲げ、事業手法や事業期間、事業効果、課題や要望等に関する意見を求める。提案は、既存の公園利用者や周辺住民の理解が得られ、市にもプラス効果が期待できるものとする。

 詳細は、宮崎市のホームページ(ホーム>産業・事業者>民間委託等の推進>公民連携事業に向けたサウンディング調査)で確認できる。

 ※セミナーの配付資料は、宮崎県のホームページからダウンロードできます。