▲SPCを設立する3社の社長
中核的な橋梁技術をはじめとした「国土基盤整備・保全分野」に、「環境・新エネルギー」と「地域創生」を加えた三つの分野を事業軸とした成長を目差す―。事業創造型のビジネスを志向する長大(永冶泰司代表取締役社長)が、保有する経営資源を生かしたサービスプロバイダとしてのビジネスモデル構築と、プロダクツ事業の強化に向けて、また新たな一歩を踏み出した。
同社は、日本トランクバスター(東京都、加持智弘代表取締役社長)と日本化学機械製造(大阪市、高橋正一代表取締役社長)の2社と合弁で、木質バイオマスガス化発電設備を国内のバイオマス発電事業者に販売するための特別目的会社(SPC)を設立することで合意。13日に同社(本社)で株主間契約者に調印した。
同社が3社合弁のSPCを設立する目的は大きく分けて二つある。
一つは、日本トランクバスターが日本国内の特約代理店となっているリニューアブルプラス社(マレーシア)の木質バイオマスガス化発電設備「ブルーフレーム」(ダウンドラフト方式)を日本国内で販売するとともに、発電設備の建設・管理・運営を一貫して請け負うビジネスモデルを構築すること。
もう一つは、自らが事業者となってモデルプラントを建設し、発電事業を行うことにある。
リニューアブルプラス社製のガス化炉を核としたモデルプラントは、山梨県内で候補地を選定して建設。燃料として想定している国産材の間伐材などを使用する際、国内の湿度や温度が発電量に及ぼす影響を確認し、最大発電量を得るための機器の最適化などについて検証する。
長大は、このモデルプラントで得た知見を今後、同社が木質バイオマスガス化発電設備を用いた再生可能エネルギービジネスを展開していく際の“アドバンテージ”にしたい考えだ。
同社はフィリピンで小水力発電開発やベトナムでのバイオトイレ普及などに取り組んでいる。連結子会社の基礎地盤コンサルタンツ(岩﨑公俊代表取締役社長)も石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の「岩木山地域地熱資源開発調査事業(12~15年度)」を代表事業者として担うなど、国内外で新エネルギー・再生可能エネルギーの供給事業と、周辺関連事業の技術・ノウハウの蓄積を進めているが、木質バイオマスによる発電事業に着手するのは初めて。
永冶社長は「燃料の安定的確保が一番の課題だ。(間伐材など)地域の森林資源を活用することで、雇用を生むこともできる。地域に根差したビジネスモデルの構築が、地域の活性化だけでなく、この国の将来への貢献にもなるはず。災害時には地域単位で電力・熱エネルギーの供給が可能になるというメリットも期待できる」と話す。
SPCには長大が51%、ほかの2社がそれぞれ24.5%ずつ出資し、資本金100万円でスタート。3月に新会社を設立後、約1年間にわたってモデルプラントでの実証を行った上で、1時間当たり500㌔㍗(一般家庭の消費電力で1000世帯分)を発電し、東京電力への売電を開始する。