宮崎市は、災害に強いまちづくりを推進するための防災拠点として新たに整備する消防局・北消防署庁舎の整備基本計画案をまとめ、2月15日から計画案に対するパブリックコメントを開始した。霧島5丁目の消防局管理地に移転整備する新庁舎等の施設規模を約7000m2と想定。概算事業費は約62億円を見込む。2022~23年度に基本・実施設計を行い、24~25年度に建設工事を行う考え。
1980年に竣工した現在の消防局・北消防署庁舎(宮崎市和知川原1丁目、RC造地上4階地下1階延べ3095m2)は、経年に伴う建物や設備の老朽化・狭隘化が進んでいる。また、現庁舎を含めた周辺一帯は、最大規模の浸水想定で浸水する可能性が高いとされており、洪水発生時に消防機能が低下することが懸念される。
現庁舎の抱える課題を踏まえ、消防局は14年から庁舎整備に関する検討を開始。消防局庁舎を取り巻く現状や庁舎に求められる機能などについて協議を重ねてきた。昨年7月には「新庁舎整備基本計画策定業務」をランドブレインに委託し、新庁舎の基本的な整備方針や必要な機能等を具体的に定めた基本計画案をまとめた。
基本計画案では、新庁舎のコンセプトに「住民の安全安心を守る消防活動拠点となる庁舎」「消防職員・消防団員・住民の訓練活動拠点となる庁舎」「大規模災害発生時の災害活動拠点となる庁舎」「人と環境にやさしく経済性に優れた庁舎」を掲げる。
新庁舎は、適切な配置や動線計画、機能的収納により、迅速で的確な消防・救助・救急活動を可能とするほか、消防広域化や組織改編に柔軟に対応し、高い機能性を確保した汎用性を持たせる。消防力の向上のため、実践的で効果的な訓練が実施できる施設を備え、消防団など各防災関係機関との連携活動も可能な施設とする。
また、大規模洪水や南海トラフ地震など、あらゆる災害への安全性を確保し、大規模災害時にも自立した活動を継続できるようにする。発災直後から市庁舎及び関係機関と連携を図り、適切に指揮体制をとることができる庁舎、非常招集された職員や全国からの緊急消防援助隊を円滑に受け入れることができる庁舎を目指す。
新庁舎に求められる機能として、各種諸室や指令センター、仮眠・休憩室、車庫、倉庫、資機材保管・消毒室といった従来の機能に加え、消防局に講堂やヘリポートなど、指令センターに災害対策室や洗面・浴室など、防災センターに研修室や体験型施設など、北消防署に自家用給油取扱所や訓練棟、トレーニング室などを新設する。
施設構成は、機能別に大きく分けて、消防庁舎棟、訓練施設、車両車庫、駐車場、駐輪場、その他付帯施設を想定。このうち、消防局や北消防署、指令センター、防災センターなどが入居する消防庁舎棟の規模は、3~4階建で延床面積6000m2程度を想定。屋外施設(車庫・訓練棟)を含めた施設規模は合計7000m2程度を見込む。
消防庁舎棟の耐震性能に関しては、国土交通省が定める基準に基づき、構造体についてはⅠ類、建築非構造部材についてはA類、建築設備については甲類とすることを検討する。構造形式に関しては、災害対応を担う施設機能の面から、大地震時に建物への被害を最小限に抑えることが期待できる免震構造を軸に検討を行うとした。
一方、敷地のゾーニングに関しては、建設地や敷地周辺の状況、緊急車両の出入り、現地の地盤状況等を踏まえ、新庁舎の建設可能エリアを敷地北側と想定。施設の配置案に関しては、消防庁舎棟と防災センターを1棟で整備する2案、これらを分棟で整備する2案の計4案を示し、各案のメリットやデメリットを示した。
免震構造を採用した場合の庁舎施設の建築工事(約44億円)、既存建物の解体工事(約1・5億円)、外構工事(約4億円)を合計したイニシャルコストは約62億円と試算。財源には、充当率100%、交付税措置率70%の「緊急防災・減災事業債」のほか、公共施設等の集約化・複合化に活用できる地方債などを活用する。
事業方式については、事業の緊急性や施設の専門性・特殊性等を考慮し、設計・施工を分割して発注する従来型手法を採用するとした。現時点の事業スケジュール案では、緊急防災・減災事業債の活用期限である25年度末の完成を目指し、22年度~23年度に基本・実施設計、24~25年度に建設工事を行う予定でいる。
市が18日に発表した22年度当初予算案では、「消防局・北消防署新庁舎整備事業」に5100万円を計上するとともに、支出期間を22~23年度、限度額を1億8500万円とする債務負担行為を設定。22年度は施設整備に係る基礎調査や基本・実施設計を行うとしている。