国土交通省九州地方整備局は1月25日、2020年度第4回事業評価監視委員会(園田佳巨委員長=九州大学大学院工学研究院教授)を開催した。再評価の対象となった東九州自動車道清武JCT~北郷や国道220号日南・志布志道路、国道220号油津・夏井道路について、日南・志布志道路と油津・夏井道路は橋梁形式の見直しやフルIC化等に伴い事業費を増額したうえで、いずれの事業も継続することを了承した。
公共事業の再評価では、事業の効率性や透明性の向上を図るため、事業採択後一定期間が経過した時点で未着工の事業や、事業採択後長期間が経過した時点で継続中の事業、再評価実施後に一定期間が経過している事業等を対象に、事業継続の可否を審議する。今会合では、管内の道路4事業と海岸1事業、ダム1事業の再評価を行った。
このうち、宮崎県内で整備が進む東九州自動車道清武JCT~北郷と、宮崎県及び鹿児島県で整備が進む国道220号日南・志布志道路、国道220号油津・夏井道路は、高速道路ネットワークの一部を形成し、九州東部の広域的な連携を図るとともに、物流の効率化や地域の発展、災害に強いネットワークの構築等を目的とした事業。
宮崎市清武町今泉を起点、日南市北郷町郷之原を終点とする清武JCT~北郷間(延長19㎞)は、1998年に事業化し、2003年に新直轄方式へ移行。05年から用地買収と工事に着手し、12年に清武JCT~清武南IC(延長1.2㎞)が開通した。現在は、計画路線の道路改良工事やトンネル付属物工事等を行っている。
全体事業費は1622億円で、19年度末時点の事業進捗率は、事業費ベースで約84%、用地ベースで100%。トンネルや橋梁上部工が概ね完了するなど、大規模構造物の工事工程に目処が立ったことに加え、芳ノ元トンネル周辺の地すべり対策で変位が収束傾向にあることから、順調に進捗した場合、22年度に開通する見通し。
■橋梁形式など見直し、事業費増額
日南・志布志道路は、東九州道の一部を形成する日南~志布志間の一部として、16年度に事業化された。事業区間は、日南東郷IC~油津ICの日南区間(延長3.2㎞)と夏井IC~志布志ICの志布志区間(同3.7㎞)の2箇所。18年度に用地買収、19年度に工事に着手し、現在は用地買収や道路改良工、橋梁下部工が進む。
当初計画の全体事業費は約222億円だったが、今回の再評価で事業費を約97億円増額する。内訳は、日南油津大橋の橋梁形式の変更に約30億円、日南区間に於ける函渠の追加(5箇所)に約10億円、志布志区間の構造変更(盛土→橋梁)に約40億円、志布志区間の橋梁構造の見直しに約8億円、日南東郷ICのフルIC化に約9億円。
日南油津大橋に関しては、支持層が当初の想定よりも深いことや、橋梁架設に伴う工業用排水路への振動の影響を考慮し、橋梁形式を鋼6径間連続鈑桁橋から鋼4径間連続鋼床版箱桁橋に変更する。見直し後の事業費総額は約319億円。これに対する事業進捗率は、事業費ベースで約10%、用地ベースで約35%となる。
見直し後の工事概算数量は、土工約116万m3(切土33万m3、盛土83万m3)、軟弱地盤改良工1万4284m3、法面工約15万m2、函渠工746m、排水工6925m、中央分離帯工6071m、橋梁12橋(100m以上5橋、100m未満7橋)、ダイヤモンド型IC2箇所、車道舗装7万2759m2など。
一方、油津・夏井道路は、東九州道の一部を形成する日南~志布志間の一部として、20年度に事業化された。事業区間は、油津IC~南郷ICの油津区間(延長6.4㎞)と、奈留IC~串間IC~夏井ICの串間・夏井区間(延長14.1㎞、県内区間は約9.7㎞)の2箇所。現在は、地質調査や道路予備設計を進めている。
当初計画の全体事業費は約750億円だったが、片方向のみ乗降可能なハーフICとしていた奈留IC及び夏井ICをフルIC化に変更することに伴い、今回の評価で事業費を約21億円増額して、全体事業費を約771億円に見直す。これに対する事業進捗率は、事業費ベースで約0.3%、用地ベースで0%となる。
見直し後の工事概算数量は、土工約674万m3(切土278万m3、盛土351万m3外)、法面工約64万m2、函渠工2266m、排水工1万7734m、中央分離帯工1万6588m、橋梁13橋(100m以上3橋、100m未満10橋)、跨道橋10橋、トンネル3箇所(総延長2817m)、ダイヤモンド型IC4箇所、車道舗装約18万m2など。
■北方延岡道路など事後評価
会合ではこのほか、東九州自動車道と一体となった広域ネットワークとして15年度に開通した「一般国道218号北方延岡道路」、水深13mの岸壁や泊地、臨海道路、埠頭用地を整備し、15年度に供用を開始した「細島港白浜地区国際物流ターミナル整備事業」の事後評価も実施。事業効果の発現状況を踏まえ、事務局が示した対応方針の原案どおり、「当面の改善措置や更なる事後評価の必要はない」ことを確認した。