清水建設は4月13日、同じ作業所に勤務していた3人が新型コロナウイルスに感染し、このうち1人の容体が急変して死亡したことを明らかにした。この事態を重く受け止めた同社は、緊急事態宣言の対象となっている7都府県(14日現在)にある作業所を原則、宣言終了まで閉所するとの方針のもと、それぞれの発注者と協議することを決めた。
都内の作業所に勤務していた3人は、発熱などがあり、PCR検査を受けた結果、陽性と判明。このうち1人は検査後も体調不良が続き、自宅待機をしていたところ、容体が急変して死亡したという。
同社はこの間、コロナウイルス感染症対策として、社員や協力事業者などの関係者が使用する空間の除菌・消毒を励行し、「3つの密」を徹底して回避するよう指示。内勤者に対してはテレワークを求め、出張の自粛などによる感染拡大の防止に努めていた。緊急事態宣言が発令されて以降は、出社人数を一層削減するなど、人と人との接触を極力減らす努力も続けていた。
■対応に“苦慮”するゼネコン
清水建設の社員が新型コロナウイルスに感染し、死亡した事案の発生に、建設業界は大きなショックを受けている。建通新聞社が主だったゼネコン(2018年度の完成工事高上位20社)に確認したところ、緊急事態宣言対象地域の作業所を閉所する方針を決定した清水建設に追随し、「工事を中断する」との経営判断を下した社は、14日時点ではなかった。ただ、「今まさに対応を協議中」という社や、「下請け企業への影響なども含め、検討中」と回答する社もあり、回答の中に、自社の社員や協力会社・関係者の安全確保と、経営の狭間で苦慮するゼネコンの姿が垣間見えた。
代表的な回答の一つは「3密を徹底した上で、原則として作業は継続していく」(A社)というもの。これに近い回答で、かつ多数だったのが、「工事を継続するという考えに変更はない。ただ状況変化を注視する」(B社)という回答だった。
中には「工事の継続を基本方針としているが、稼働中の案件の発注者と協議して、個別の状況もみながら対応を考えたい」(C社)という”両にらみ”の姿勢の社も複数あった。
他方、「すでに緊急事態宣言の対象地域の作業所の全てで、発注者(施主)と協議を進めており、作業所ごとの個別の事情、状況を勘案して判断したい」(D社)という社や、「まだ公表できないが、ほぼ方向性は定まりつつある」(E社)などと、近日中の経営判断をにおわせる社も少数ながらあった。