建設業労働災害防止協会(建災防、錢高一善会長)が外国人労働者に対する安全衛生教育の実態把握を目的として、建設労務安全研究会(労研会)の会員企業と、その協力会社を対象に行った調査結果を報告書にまとめた。この調査からは「受け入れ側」が、外国人労働者を労働力として期待し、彼らに対する労働安全衛生教育の必要性を認識している一方で、「日本語の壁」を取り除くことに腐心し、教育時間と適切な教材の確保についても課題として認識していることが分かった。
労働安全衛生に不可欠な日本語の理解度については、「基本的な日本語をある程度、理解することができる」外国人労働者が38.5%、「基本的な日本語を理解することができる」が30.5%だった。
ただ、総じて「受け入れ側」の外国人労働者の勤務態度に対する評価は高かく、労研会の会員企業の68.8%、協力会社の72.1%が、「現場の即戦力として期待できる」と答えた。
一方、外国人労働者の労働災害の有無については、労研会の会員企業の59.4%、協力会社の72.1%の企業が、それぞれ「あった」と回答。労研会の会員企業では「休業4日未満」の労働災害が89件、協力会社では77件あったことも分かった。
外国人労働者の労働災害があったと回答した労研会の企業と協力会社に、その労働災害の事故の型を尋ねたところ、労研会の会員企業では「切れ・こすれ」、協力会社では「はさまれ・巻き込まれ」がそれぞれ最も多かった。
他方、外国人労働者の安全衛生教育に取り組んでいると答えた協力会社は88.8%で、取り組みの内容としては、「雇い入れ時または作業変更時の安全衛生教育」(255件)が最も多く、次いで「特別教育」(247件)、「法定教育以外の一般の安全衛生教育」(246件)だった。
外国人労働者に対し、労働安全衛生法が規定している「法定教育等」を実施していると答えた協力会社に実施主体を尋ねたところ、特別教育を「自社で行っている」と回答した企業の割合と、「外部講習を受講」と答えた企業の割合がともに5割程度。職長教育については、「自社で行っている」との回答が57.1%、「外部講習を受講」が42.9%だった。雇い入れ時・作業変更時教育と法定教育以外の教育については、いずれも「自社で行っている」と答えた企業が9割を超えた。
また、特別教育の際に用いられた教材の種類・内容について尋ねたところ、「日本語教材」が187件と最も多く、「日本語教材の全訳版」または「一部訳版」を使用したという回答は合わせて100件あった。
職長教育、雇入れ時・作業変更時教育、法定教育以外の一般教育のいずれかを自社で実施していると回答した協力会社に尋ねたところ、講師については「自社の社員」と答えた企業が多く、雇い入れ時・作業変更時教育の274件、法定教育以外では248件となった。
教材については「市販のテキスト(日本語のみ)」や「自社で作成したテキスト(日本語と母国語訳)」、「自社で作成した補助教材(ポイント集など)」といった回答が多かった。
今回の調査は、特定技能1号外国人に対する特別教育と、特定技能2号外国人に対する技能講習、職長教育の在り方、さらに外国人労働者を対象とした建設工事現場用安全標識の作成などを検討するための基礎資料とすることを目的として19年8月20日~9月30日までの間に行われた。労研会の会員企業と協力会社の合計425社から回答を得た。