異常気象時の通行規制や土砂災害に伴う通行止めなど、交通上の課題が山積している日南地区の国道220号に関して、国土交通省九州地方整備局宮崎河川国道事務所は、特に対策が急がれる区間(現道延長2.7㎞)を別線で整備する案を検討している。九州地方整備局は、当該区間を「日南防災(南区間・宮浦~鵜戸)」として事業化する手続きを進めており、国の2020年度予算に関連事業費を盛り込んでいる。
宮崎市を起点とし、日南市、串間市を経て鹿児島県霧島市に至る国道220号(延長約190㎞)のうち、青島~日南地区内には異常気象時通行規制区間が点在している。現在は、異常気象時通行規制区間である宮崎市小内海~日南市富土の約4.5㎞を日南防災(北区間)と位置付け、トンネルや橋梁、道路改良といった整備を進めている。
他方、日南市宮浦~風田の異常気象時通行規制区間(約11.2㎞)では、1991年に供用を開始した新鵜戸トンネル(約3.1㎞)などを除く区間で、降雨による土砂災害等が多発。2017年10月には、大型台風の接近に伴う降雨で志戸辻地区の斜面が崩壊し、土砂や倒木等が道路を跨いで海側にまで流出するといった被害が生じている。
降雨等による異常気象時通行規制や土砂災害時の通行止めで発生する沿線集落の孤立、迂回の解消に向けて、宮崎河川国道事務所は18年度から防災事業の必要性や対策内容に関する検討を実施。専門的かつ技術的な観点から有識者の助言を得ながら対策案をとりまとめ、3月11日~17日に開催した宮崎管内国道防災検討会で示した。
新型コロナウィルス感染拡大防止のため、委員会形式ではなく有識者と個別に協議する形で行った検討会では、国道220号の課題を共有した上で、特に対策が急がれる宮浦遮断機付近から新鵜戸トンネルまでの2.7㎞(日南市宮浦字鳥越~松ケ迫)について、山間部を直線的に貫く別線(約1.7㎞)で整備する案を示し、意見を交わした。
会合で有識者は、「現道対策で解決するためには、施工上の技術的な課題解決に加え、膨大な費用と期間が必要であり、別線整備が望ましい」「規制区間のうち宮浦~鵜戸間の課題が最も多く、特に対策が急がれる区間といえる」「別線整備ルート案は大規模地すべり等の地質リスクを回避しており妥当と判断される」と対策案に理解を示した。
会合ではこのほか、「今後、地質踏査・ボーリング調査等により、地形・地質を適切に把握しながら設計すること」を有識者が求めた。検討会の有識者は、横田漠宮崎大学名誉教授、末次大輔宮崎大学教授、福林良典宮崎大学准教授、神山惇宮崎大学助教の4人。
■早期整備へ取組推進、河野知事コメント
国土交通省から国道220号日南防災(南区間・宮浦~鵜戸)に関する2020年度からの予算化に関する意見照会があったことを受けて、宮崎県の河野俊嗣知事は3月19日、「引き続き、沿線自治体等と連携を図りながら、日南防災事業の北区間・南区間の防災対策の早期整備に全力で取り組んでいく」とするコメントを発表した。
本県の観光や産業、さらには「命の道」として重要な路線である国道220号に於いて、大規模な斜面崩壊による通行止めや大雨による予防規制が相次ぎ、沿線住民の生活等に影響が出ていることから、沿線自治体と一体となって、「小内海~富土間」(北区間)及び「宮浦~風田間」(南区間)の防災事業の促進を国に訴えてきたことを強調。
このうち、北区間に於いては、伊比井潮風トンネルをはじめとする整備が進められているが、今回、南区間の一部である「宮浦~鵜戸」間の対策が進められることで、「南海トラフ巨大地震の発生が懸念される中、沿線住民の安全安心の確保はもとより、広域観光や地場産業の振興につながるものであり、嬉しく思っている」と歓迎した。