「警備員を見下している職人や現場監督が少なくない。うちの警備員さんを『おい、警備員!』と呼び捨てにする。また、休憩時間に飲み物を買いに行かせる」。ハウスメーカーの小さな現場の仕事が多いという警備会社の経営者は憤る。「そんな現場は報告しろと言っている。契約を打ち切ってもいい」
会社を定年退職したものの「体がまだ元気だから」と警備業の世界に入ってくる高齢者が少なくない。「長く企業に勤め、常識の中で生きてきた人が、いきなり非常識な状況に直面する」。交通規制を巡ってドライバーから罵声を浴びることもある。「プライドを砕かれ、辞めてしまうことが多い」と問題視する。
低賃金に加え、就労環境の悪さや仕事のきつさが警備員の定着率に影響し、人手不足にもつながっている。厚生労働省の2018年の賃金構造基本統計調査によると、警備員の勤続年数は平均8.5年で、全産業の12.4年と比べて短い。
就労環境に関しては、例えば交通誘導警備員は新たな現場に就くたび、トイレを心配している。簡易トイレがあればいいが、無ければ公園のトイレやコンビニを探す。
「トイレが遠くても、作業員は仕事から抜けやすいが、警備員はそうはいかない。1人しかいなければ我慢するしかない」と別の警備業者は話す。そういった問題について建設業者に配慮してほしいと言う。
「警備員の人数を、配置するポストの数で注文してくる建設業者がいまでもいる。片側交互通行であればポストは2人。しかしトイレの交代要員はどうするのか。ポストの数が、必要な警備員の数になるわけでない。そういったことを分かってくれて、3人頼んでくる建設業者もいれば、2人のままで変わらない業者もいる」
更衣室や休憩場所も課題だ。「路上でしか着替えられないような現場もある。また、道路の現場での休憩時、作業員は車の中で休めるが、警備員は路端にいるしかない」
警備員の就労環境の改善に向けて「問題を建設業と積極的に話し合っていきたい」と話す警備会社の経営者もいる。(地方建設専門紙の会・建通新聞社)
=つづく=