社会資本整備審議会道路分科会九州地方小委員会(辰巳浩委員長=福岡大学工学部社会デザイン工学科教授)は2月11日、国道10号住吉道路(宮崎市)の計画段階評価を行った。会合では、地域の現状や課題、意見聴取の結果を踏まえ、現道の西側にバイパスを整備する「別線整備案(西側バイパス案)」を対応方針案とすることを了承した。
計画段階評価は、公共事業の実施過程の透明性を向上させるため、新規事業採択時評価の前段階で政策目標を明確化し、複数案の比較・評価を行うもの。地方支分部局が評価を行うにあたって必要なデータの収集や整理、資料作成等を行い、地域の意見聴取を踏まえつつ、学識経験者等で構成する委員会等の意見を聴き、対応方針案を決定する。
宮崎市北部に位置する住吉道路は、県東部を縦貫する国道10号の一部であり、佐土原バイパスと宮崎北バイパスに挟まれた2車線区間。容量を上回る交通集中により、平日・休日ともに渋滞が発生し、県内平均の約3倍にあたる死傷事故が発生するなど、交通環境の改善や沿道環境の保全、信頼性の高い緊急交通路の確保が急務となっている。
こういった課題を踏まえ、九州地方整備局は交通容量や安全性の確保、災害時や救急搬送時における信頼性の向上、移動速達性の確保といった政策目標を実現できる道路の整備を検討。昨年9月に開かれた委員会の中で、①現道改良案②西側バイパス案(山側案)③東側バイパス案(海側案)―の3つのルート帯案を提示していた。
提示した3つのルート帯案に関して、暮らしや防災、医療、産業、観光の観点から比較検討を実施するとともに、沿線周辺自治体や団体の代表者、地域住民、企業等から意見を聴取。地域住民らが重要視する政策目標が概ね達成され、他案よりも総合的に優れている「西側バイパス案」を対応方針案とし、委員がこれを了承した。
西側バイパス案は、国道10号の西側(山側)に4車線のバイパスを整備し、通過交通を分離することで交通混雑の緩和を図るもの。バイパス整備区間は概ね田畑や山地で、自然環境の改変を伴うが、生活環境への影響は小さく、家屋・店舗移転等も少ない。バイパスの整備延長は約6㎞で、概算整備費は約380~430億円を見込む。
地域住民や自治体からは、「渋滞せずに円滑に移動でき、沿道施設を利用する交通の阻害を受けない」「事故の危険性が少ない」「歩行者の安全が守られ、生活道路への流入が防げる」「災害時に国道10号の代替路として利用できる」ことを重要視する意見が多く寄せられており、西側バイパス案ではこういった要望を概ね達成できる。
国土交通省は今後、対応方針案を正式に決定し、事業化に向けた手続きを進める。なお、詳細なルートや構造に際しては、コスト縮減に留意して検討を行うとともに、既存の道路状況や沿道利用状況を踏まえながら、新たに整備される道路と既存の道路の接続方法や景観への配慮について各関係自治体と調整を行う。