建設ネット企画画像 四角 四角

全国全職種平均で初の2万円台に 公共工事設計労務単価

 国土交通省は、3月1日から適用する公共工事設計労務単価を決定した。全国全職種平均(50職種)は前年度と比べ2.5%増の2万0214円(伸び率は単純平均、金額は加重平均)となり、単価公表後の最高値を更新するとともに、公表後初めて2万円の大台を突破した。今回は、労働基準法改正で年間5日間の有休休暇の取得が義務付けられたことを踏まえ、義務化された日数分の費用を新たに反映。全ての都道府県で全職種平均がプラスとなり、特に災害復旧が多い四国と九州の伸び率が目立つ。

 法定福利費相当額を上乗せして単価が大幅に上昇した13年度以降、8年連続の引き上げとなったが、伸び率は過去8年間で最小。それでも12年度の全国全職種平均の単価と比べると51.7%上昇した。調査は51職種を対象に行ったが、「建築ブロック工」は有効標本数を確保できなかったために単価を設定していない。

 単価を設定した50職種のうち、全国平均の伸び率が最も高かった職種は「トンネル世話役」の5.9%増。労働者数の多い12職種では、ここ数年伸び率が最も高かった「交通誘導員B」が2.2%増、「交通誘導員A」が2.4%増と単価の伸びが鈍化した。鉄筋工、型枠工、左官はいずれも2.6%増と全国全職種平均の伸び率を上回った。

 都道府県別の全職種平均では、高知県が5.0%増と最も高い伸び率で、愛媛県が4.9%増、徳島県が4.8%増、香川県が4.7%増と四国が軒並み高い伸び。九州の各県も全国平均を上回る3%台の伸び率となるなど、西日本の伸び率が総じて高くなった。

 一方、関東甲信は、東京都が1.1%増、神奈川県が1.3%増となった他、山梨県と長野県の伸び率が1%台を割り込むなど、伸び率が鈍化した。東日本大震災の被災3県に対する嵩上げ措置は継続しており、岩手県で2.9%増、宮城県で2.8%増、福島県で3.1%増と平均を上回った。

 新単価は3月1日以降に契約する国交省と農林水産省の直轄工事に適用する。今回も、旧単価で入札した工事に新単価を反映する特例措置を適用する。

■労務単価に有給休暇義務化分を上乗せ

 国土交通省は、2月14日に発表した公共工事設計労務単価で、改正労働基準法による有給休暇取得の義務化分を単価に上乗せした。同省の調査で、義務化された年5日の有給休暇を取得していた技能者は全体の4割にすぎなかったが、法的義務があることを考慮し、単価に義務化分を上乗せした。

 労働基準法の改正により、2019年4月から年間10日以上の有給休暇が支給された労働者に対し、企業が年5日の有給休暇を取得されることが義務化された。

 これを受け、国交省は19年度の公共事業労務費調査で年間の有給休暇の取得状況を把握。調査結果によると、義務化の対象となる技能者で年間5日の有給休暇を取得していたのは38.5%。次数の高い下請けほど有給休暇を取得させていない傾向が出ている。

 有給休暇取得を管理していなかったり、企業が有給休暇制度を設けていないなど、残る61.5%の技能者が有給休暇の義務化分を取得していない。労務費調査によって労働市場の実態を単価に反映させるのが前提だが、国交省は法的義務があることを重く見て、義務化されている年5日分を労務単価に上乗せした。

 また、同じ労務費調査では、19年10月の技能者の休暇取得が月平均8.4日となり、週8日以上の休暇を取れなかった技能者が45%いたことも分かっている。

九州各県の公共工事設計労務単価