▲写真は黄色の重機が自動化施工、見学会の模様
宮崎市田野町の株式会社金本組(金本純一代表取締役)は、掘削、旋回、排土の一連の動作を自動化し、無人で施工を行うことができる油圧ショベル(別名=バックホウ)を県内で初めて建設現場に導入した。8月26日には、油圧ショベルによる自動化施工を業界関係者で共有することで業界全体のインフラDXを推進することを目的に、建機レンタル会社が参加する現地見学会を開催し、バックホウが自動施工を行う模様を確認した。
この油圧ショベルは、スタートアップ企業のARAV株式会社が提供する後付け型の自動運転システム「ヨイショ投入くん」を搭載した油圧ショベルで、プラントやリサイクルヤードなどにおける土砂等の投入作業を無人化するソリューションとして開発されており、LiDARやIMUなどのセンサーを通じて周辺環境をリアルタイムで把握し、最適な掘削・排土動作を自律的に実行できる。
建設業界が直面する深刻な人手不足に対し、建機の自動化は最も現実的な解決策のひとつだが、中小・中堅規模の建設会社にとっては、導入のハードルが高いのが実情だ。
金本組では、同社が請け負う民間の宅地造成工事の現場で、ARAVと共同で現場条件に合うようシステムをカスタマイズし、当該現場での部分的な自動化施工に成功した。
具体的には、地山の掘削とダンプへの積み込みを行う各バックホウの連結役として、自動稼働する油圧ショベルを配置。毎朝、同社の技術者が掘削範囲や排土位置などを設定し、1台目のバックホウが掘削した土砂をすくい上げ、ダンプへの積み込みを行う3台目のバックホウの作業範囲へ排土する作業を自動で行っている。
現場で必ず発生する単純作業を自動運転で施工することにより、オペレーターの省人化や生産性の向上を実現するとともに、国土交通省の「自動施工における安全ルールVer1.0」に準拠した安全対策も実装。距離を制限しない遠隔操作への切り替えも可能で、操作はiPadとゲーム機のコントローラーを使用して行う。
26日に行われた現地見学会では、金本組事業本部の河野義博本部長とICT推進室の内野智仁氏が、現場事務所に設置したモニターや実際に作業を行うバックホウを前に、自動施工の仕組みを説明した。質疑応答では、現場の通信方法や自動運転オペレーションの設定方法、遠隔操作時の操作方法といった参加者からの質問に応じた。
同社では、今回の現場で得られた知見を生かし、国土交通省と締結している災害協定に基づき、災害発生時12時間以内に被災地で遠隔操作を開始できる体制の構築を目指している。将来的には、ダンプへの積み込みや運行管理システムとの連携などを通じて更なる省人化を推進し、人手不足等の課題の根本的な解決に繋がることに期待を寄せる。