川南町は「町立中学校の統合に係る基本方針」を策定し、5月に行われた教育委員会臨時会で承認を得た。基本方針では、少子高齢化に伴う生徒数及び学級数の推移やこれに伴う学校運営上の課題、町民へのアンケート調査の結果を踏まえ、「唐瀬原中学校と国光原中学校を統合し、町中央部に新中学校を新規整備する」とした。
2024年度時点の両中学校の生徒数は合計419人で、学級数は15クラス。今後も生徒数の減少は加速化し、両校を合わせた生徒数は27年に400人を、34年に300人を下回ると推計する。通常学級の1学級35人で算出した場合、両校ともに24年度の時点で学校教育法施行規則で定める適正規模を下回っている状況にある。
現時点の両校の規模では、学級数に基づいて定められている教員定数上、専門外の教員や町雇用講師による教科指導体制をとらざるを得ない状況となっている。両校を統合することで、全教科専門教員を配置することが可能となり、組織的な指導体制や指導方法の工夫をとりやすくなるため、生徒の学力向上に寄与することが期待できる。
一方で、既存施設の老朽化も大きな課題だ。既存校舎等を長寿命化改修して活用する方法もあるが、改修後30~40年後には建て替えを行わなければならない。また、現在の校舎の中には築後50年を経過しているものがあるため、バリアフリー(エレベータ等を含む)などで現在の規格に合わず、長寿命化改修にも限界があるという。
他方、新たな中学校に於ける子ども達の学校内外での学習を考えた場合、既存の中学校敷地を活用して新中学校を整備するより、町中央部に新中学校を新規整備する方が、町立図書館や文化ホール、総合運動公園等と隣接することになり、地域住民との交流やふれあい等も期待できるなど、子ども達により恵まれた学習環境を提供できる。
さらに、24年12月に町民を対象に実施した「町立中学校統合に関するアンケート調査」では、中学校の統合に「理解できる」とした回答が全体の3分の2を占めた。また、長寿命化改修ではなく「新しい中学校を整備する」とした回答が約半数を占め、その中で既存の中学校敷地外への新規整備を求める回答が全体の約8割を占めた。
こうしたことから、基本方針では「唐瀬原中学校と国光原中学校を統合し、町中央部に新中学校を新規整備する」と明記した。一方で、小学校については、地域のつながりや地域住民の理解等を考慮すると、早急な統合は難しいと判断。「段階的な統合や小中一貫校も視野に入れながら、今後具体的な検討を進めていく」とした。
新中学校には、ICTを快適に利用するための最新の施設・設備を整備。コミュニケーションがとりやすく、学び合う学習ができるような校舎デザイン・教室配置とする。バリアフリーやユニバーサルデザインに配慮した施設・設備を検討するとともに、校舎については優しい肌触りのある建築を目指し、県産材を多用した造りを検討する。
安全・環境・防災にも配慮し、永く使い続けることができる十分な耐久性・耐震性能をもった構造を検討するとともに、不審者の侵入防止や犯罪防止の観点から、防犯カメラ・インターホンなどの防犯設備の設置を検討する。エコスクールとして、太陽光発電やLED照明機器、屋根、壁の高断熱化及び屋上、ベランダ等の緑化等も検討する。
さらに、地域コミュニティの核として「地域とともにある学校づくり」の視点を踏まえ、地域住民も利用できる交流拠点としての機能をもった施設を検討する。