▲写真は講師の藤原氏、海法氏、セミナーの模様
宮崎県内の設計4団体は、2月8日に宮崎市民プラザで「建築セミナー2024」を共催した。今年のセミナーには、各団体の会員を中心に約40人が参加。才能に恵まれ、真摯な努力を重ねる新進建築家を表彰する公益社団法人日本建築家協会(JIA)の新人賞を受賞した藤原徹平氏と海法圭氏が基調講演を行った。
セミナーは、建築士の資質向上や建築文化の醸成等を目的に、公益社団法人日本建築家協会九州支部宮崎地域会、一般社団法人宮崎県建築士会、一般社団法人宮崎県建築士事務所協会、一般社団法人日本建築構造技術者協会九州支部宮崎地区会の4団体が共催し、宮崎県が後援した。今回で6回目の開催となる。
開会挨拶でJIA九州支部宮崎地域会の久寿米木和夫会長は、遠方からの来宮に感謝の意を示し、新進気鋭の建築家の講演を「興味深く拝聴したい」と挨拶した。
講師を務めたのは、閑静な住宅街に建つ18戸のコーポラティブハウス「チドリテラス」を手掛けた藤原徹平氏(フジワラテッペイアーキテクツラボ)、新潟県上越市で観光型の雪中貯蔵施設「ユキノハコ」を手掛けた海法圭氏(海法圭建築設計事務所)。
藤原氏は、入居を希望する数世帯が共同オーナーとなり、建築家に設計をオーダーメイドする集合住宅(コーポラティブハウス)の仕組みを説明。チドリテラスでは、元々あった大邸宅の「土地と庭を継承する」をコンセプトに共同オーナーを募り、サイズや間取りが異なる全ての住戸を庭と一体で計画したことを説明した。
藤原氏は「プロジェクトは5つの土地(サイト)に建つ」として、事業の持続性や成長性といった事業的なサイト、用途地域や権利、制限といった法的なサイトを重視する傾向がある中、個人の土地に対する思いや土地の環境・歴史の重なりを汲み取り、建築家としてこれをオーナーに提案していく必要性などを訴えた。
一方、雪を利用した天然の冷蔵庫(通称=雪室)を手掛けた海法氏は、限られた予算の中、全国的にも珍しい木造を採用し、半屋外形式の回廊を設けるなどして、観光対応型の施設としたことを説明。木造による廉価な雪室の実現により、「例えば地域の農家が集まって、小さな雪室を造れるようになる」と期待を込めた。
海法氏はこのほか、断熱や吸水・蒸散といった効果を有するウッドチップを活用した屋外の雪室を紹介し、使用して朽ちたウッドチップが農業の土づくりに使用されることを「究極のオーガニック」と指摘。その土地の気候や風土、人間活動などを大きな環境体として考える「生態学的コンテクスチュアリズム」を提案した。