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安全確保に取り組む文化を高める 吉原建設と協力会社

      

▲写真は挨拶する吉原社長、大会の模様

 吉原建設株式会社(吉原政秀代表取締役社長)は7月5日、都城市内で「第51回安全推進大会」を開催した。大会には、同社及び協力会社の職員ら総勢約600人が参加。安全表彰や現場体験発表、専門講師による安全講話、大会宣言を通じて、安全意識の高揚を図り、安心・安全な職場づくりに邁進することを誓った。

 大会会長として挨拶に立った吉原社長は、大会の目的が「年に一度の重みの中で関係者が一堂に介し、一体感を持ちながら、誰もが安心して働ける快適な職場づくりを実現するという決意を新たにすること」と説明。「安全は企業の社会的責任。一人ひとりが安全を最優先しながら、安全確保に取り組む文化を高めていこう」と呼び掛けた。

 一方で、今年度の安全表彰の受賞者に対しては、積極的な取り組みに敬意を表するとともに、「これからも労働災害を防止するリーダーとして活躍してもらいたい」と期待を込めた。また、今大会で受賞者2人が体験発表を行うことを紹介し、「一つでも多くのものを持ち帰り、それぞれの職場で活用してもらいたい」と述べた。

 さらに、全国安全週間のスローガンに込められた意図を一文ずつ紐解きながら、現場に潜む様々な危険に気付く目を持つこと、ただ見るだけでなく観察し、危険の芽が表面化する前に取り除くことの重要性を強調。「安全活動は全員が当事者であり主人公。身近な人達が無事に家に帰れるよう、皆で力を合わせていこう」と訴えた。

 表彰式では、安全衛生管理表彰を受賞した社員10人と協力業者10人の代表に表彰状が贈られた。謝辞を述べた内八重勇氏は、「事故のない環境で安心して働けることこそが会社の発展に繋がる。人命尊重の基本理念に従い、安全と健康を最優先し、今日の厳しい社会情勢に勝ち残れるよう、一層努力していきたい」と意気込みを語った。

 現場体験発表では、都城市発注の道路舗装工事に従事した本店舗装部の久保孝三氏が、車両の通行規制方法や夜間作業で重機等と作業員の接触災害を防止するための工夫、即日復旧するための施工条件について検討を行ったことを報告。

 また、建築工事に鉄骨工事の職長として従事した協力業者の冨満孝一郎氏は、3DCADを活用して事前に入念な打ち合わせを重ねたことや、クレーンの旋回及び工区分けに留意したほか、作業場の雰囲気や他業種とのコミュニケーションにも注力し、良好な関係を築いたことで、作業員が安心して作業に集中できたことを紹介した。

 大会宣言で本店建築部の夏伐優氏は、従事者の高齢化や技能者の不足、深刻な人手不足が生じ、さらには厳しい工期とコストの圧迫で安全面への影響が危惧されているとしたうえで、「このような時期こそ、確かな技術とこれまで培ってきた経験を活かし、全員参加で安全意識の高揚を図り、労働災害の防止に努めることが必要」と強調。

 全国安全週間のスローガンのもと、「社員及び協力業者が心をひとつにし、安全意識を高め、安全行動を実践することでゼロ災害を目指し、より健康で快適な職場づくりに邁進することを誓う」と宣言した。その後、企画開発本部の渡部竜也氏の発声に続いて、参加者全員で全国安全週間のスローガンを指差呼称した。

*表彰受賞者は次のとおり(敬称略)
▽社員表彰=戸髙貴宏(都城本店建築部)、中馬真(前同)、吉川和広(前同)、蓬原正樹(前同)、内八重勇(宮崎本社企画開発部)、増田泰久(都城本店土木部)、山元建治(前同)、新名亮文(日向支店土木部)、帖佐直樹(都城本店舗装部)、久保孝三(前同)
▽協力業者表彰=冨満孝一郎(第一鉄工所)、孝橋孝志(孝橋工業)、福岡康朗(タカラ建材)、西別府賢(なかじま内装)、阿部誠(三紘)、上田康弘(山本建設工業)、濵﨑禅(小野田ケミコ)、崎野雅伸(栄伸工業)、相葉健一(相葉建設)、岡田巨弘(企業警備保障)。

■とび職・多湖弘明氏が基調講演

 大会ではこのほか、とび職人の多湖弘明氏が「世界一の現場で体感した安全管理~プロの自覚と習慣がリスクを嗅ぎ取る~」をテーマに基調講演を行った。多くの大型プロジェクトに携わった多湖氏は、現場から事故を無くすためには、技術だけでなく環境や人間力が必要として、これを高めるために実践していることや心構えなどを説いた。

 多湖氏は1976年大阪生まれ。高校卒業後、18歳からとび職として高層建築現場に従事し、21歳の時に仕事仲間が目の前で命を落とす事故に遭遇する。事故をきっかけに、「世の中のすべての工事現場から事故を無くす」 という使命感を持ち、とびの仕事の頂点を志し、東京スカイツリーを建設するという夢を実現させる。

 同時に、とびの仕事をより多くの人に知ってもらおうと、1998年に日本初となる鳶の仕事を紹介したホームページを開設。SNSなどインターネットを中心に、鳶に関する情報発信を行う傍ら、カフェや美容室で写真展を開催するなど、現場のリアルを発信している。現役のとび職人として第一線で作業しながら、若手育成にも注力する。

 講演で多湖氏は、足場工事や鉄骨建方といったとび職の仕事内容を説明するとともに、現場の顔となる外部シートの張り方、クレーンを止めないための建方計画など、職人としてのこだわりや仕事の醍醐味を紹介。最も大切な安全管理に言及し、経験ある職人が若手を守るため、ルールを守る環境をつくらなければならないと話した。

 一方で、怖さを知るからこそ、これを克服できるとした上で、個人の集中力と緊張感を高めてゾーン状態に入ることも安全に繋がると説明。一人ひとりが意識を高め、互いに管理し合い、全体のレベルを上げていく必要性を強調した。

 多湖氏は、いかに安全設備や環境を整えたとしても、そこで働く人の意識が低ければ機能しないとして、事故を防ぐためには技術と環境、プラス「人間力」が必要になると指摘。全ての行動を選択しているのは自分自身であり、行動に伴う結果をより良いものとするため、「自分の意思を持って生きる」ことの重要性を説いた。