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導入時のポイントや効果解説 建設ディレクター講演会

      

▲写真は講演会の模様、講師を務めた江頭氏

 宮崎県は12月19日、「建設ディレクター」の実践企業講演会をオンライン形式で開催した。導入からわずか2年弱で、残業ゼロと書類業務移管6割を達成した株式会社西九州道路(佐賀県)の江頭一樹代表取締役を講師に招き、導入時に留意すべきポイントや導入によって得られた効果を解説した。

 建設ディレクターは、現場技術者が行っている施工データの整理や処理、提出書類の作成のほか、写真測量や3次元設計といったICT業務を担い、現場技術者をバックオフィスから支援する新たな職域。専門スキルを身に着け、現場とオフィスをつなぎ、これを支援することで、技術者がコア業務に集中できる環境を整える。

 講演で江頭氏は、現場代理人として多量の書類業務に追われていた自身の経験を振り返り、建設ディレクターの導入に至った経緯を説明。建設ディレクターを募集する際のポイントや過去の失敗事例、入社当初から3年目までの建設ディレクターの業務内容を説明するとともに、建設ディレクターに今後期待する役割に言及した。

 導入効果に関しては、「業務量オーバーによる離職防止につながり、ここ数年で仲間が20人増えた」「書類の標準化で工事点数のプレッシャーから解放された」「ダブルチェック機能にもなるので、書類の不備に気付いてくれる」「現場と総務をつなぐ役割を担い、部署間の垣根がなくなった」といった社員の声を紹介した。

 導入に際しては、デスクの配置を変更し、職場内にBGMを流すなどして、建設ディレクターが質問等をしやすい環境づくりに努めたという。江頭氏は、「今では会社に不可欠な存在」と強調し、過度な期待でプレッシャーに押しつぶされないよう、ゆっくりと焦らず、時間を掛けて育てていくことが重要などと話した。

■移管業務など整理、業務連携研修会

 同日には、宮崎県が11月から3回に分けて開催している「技術者と建設ディレクターの業務連携研修会」も行われた。研修会には建設企業20社の経営者と技術者、候補者を含む建設ディレクターが参加。対面形式で江頭氏の講演を聴講したのち、各属性に分かれて、建設ディレクターに移管する業務などについて意見を交わした。

 研修会は、建設ディレクターを効果的に活用するための仕組みづくりを支援するため、一般社団法人建設ディレクター協会の協力のもと、11月から開催しているもの。第1回では、業務連携実現に必要な体制と環境、技術者業務の洗い出しを行い、第2回では技術者が身につけたいコーチングの基礎知識と実践について解説した。

 最終回となる今回は、第1回で洗い出しを行った技術者業務の中から、建設ディレクターに移管が可能だと思う業務について、経営者、技術者、建設ディレクターのそれぞれの立場で整理。各属性に分かれて行ったグループワークで、「どの業務からスタートするのか」「そのために必要なことは何か」について、参加者が意見を交わした。

 技術者グループでは、「各現場で共通する書類から業務を移管し、徐々に拡大していくのが良い」といった意見があった一方、建設ディレクターグループでは「異業種からの転職組にとって、コミュニケーションは必須」「同じ作業でも技術者によって手法が異なり、質問しにくいことがある」などの意見が寄せられた。

 グループワークを踏まえ、参加者は移管する業務やスタート時期などの目標も設定した。今後、業務連携研修会を受講した企業のうち5社程度を対象に、技術者と建設ディレクターの連携を専門家がアドバイスする個別研修も開催する予定でいる。

 現在、建設ディレクター協会が認定する資格認定者は約2400人で、このうち宮崎県内の認定者は50人となっている。講師を務めた同協会の田辺直子氏は、技術者の負担軽減だけでなく、チーム力や組織力の強化、ダイバーシティの拡大にもつながる建設ディレクターの更なる拡大に期待を込めた。