▲写真は出前授業の模様
都城地区建設業協会女性部(宮島百合子部会長)は12月17日、都城市立山田小学校で土木や砂防に関する出前授業と体験学習を行った。同校の4~6年生約50人を対象に、災害と建設業が果たす役割、砂防施設に関する授業を行ったほか、山田町内の建設現場を訪ね、コンクリートの打設や現場で使われている最新技術などを体験した。
出前授業と体験学習は、子ども達に建設業の役割や魅力を知ってもらおうと、女性部が毎年開催しているもの。2011年に発生した霧島連山・新燃岳の噴火に伴い、都城市内でも降灰等の被害が発生したことや、山田町内で砂防堰堤工事が進められていることなどを踏まえ、「砂防博士になろう!」を授業のテーマに掲げた。
出前授業では、「土木の妖怪マツ」こと松永昭吾工学博士が、世界各地で発生している災害と建設業の役割を説明。水を例に、「生きる」「つくる」といった恩恵を与えてくれる一方、「洪水」「干ばつ」「津波」といった弊害もあることを解説し、自然の恵みと災害を一対のものとして捉える必要性を分かりやすく説明した。
そのうえで、水道の水をそのまま飲むことができる国は、日本を含めて僅かしかなく、世界には水を巡る紛争で苦しんでいる国や、汚れた水を飲まざるを得ない国が多数あることを説明。ダムや井戸、上下水道などの整備を通じて、水を治めることができる「土木」には、世界を幸せにするチカラがあることを強調した。
一方、入省1年目にして「砂防博士」に任命された国土交通省九州地方整備局宮崎河川国道事務所の永野瑶樹さんは、社会インフラを造る、災害から国土を守るといった国交省の仕事を紹介するとともに、新燃岳の噴火で様々な被害が発生したことを説明。火山活動等に伴って発生する土石流の恐ろしさを、実際の映像を使って解説した。
永野さんは、土砂や流木による被害を防ぐため、必要な箇所に砂防堰堤を築造し、完成した後も監視カメラやセンサーを使って、常に砂防堰堤が安全かどうかをチェックしていることを説明。このほか、大雨が降った時には河川に近づかない、ハザードマップで危険な箇所を事前に確認するなど、災害から身を守るための方法も紹介した。
体験学習は、株式会社志多組が山田町内で施工する平山川砂防堰堤工事(宮崎河川国道事務所発注)の建設現場で開催。生徒達は複数の班に分かれて、実際に工事で使用するコンクリート固定金具の組み立てに挑戦したほか、コンクリートの材料や各材料の役割、強く長持ちするコンクリートを造るためのポイントについて説明を受けた。
「現場博士」として登場した宮崎河川国道事務所の具志堅光宙さんは、模型を使って砂防堰堤の必要性を実演。また、砂防堰堤の完成イメージをタブレット上で現実世界に投影するAR技術も体験し、コンクリートで造る「ミニチュア砂防ダム」の作成に挑戦した。日付と校名入りのミニチュア砂防ダムは、完成後に学校に寄贈する。
体験学習後には、学校に戻ってパネルディスカッションを行った。パネリストに、宮崎河川国道事務所から砂防博士の永野さんと現場博士の具志堅さん、入省7年目の中島万依さんの3人が参加。建設会社から、志多組の永田広文さんと廣瀬龍希さんのほか、女性技術者代表として、吉原建設株式会社の中島夏葵さんが参加した。
コーディネータの松永博士は、「今の仕事をしていて楽しかったことは」と尋ね、中島夏葵さんは「現場に携わる様々な人達とコミュニケーションをとること」と回答。志多組の永田さんは「完成した時の達成感が大きな喜び」と答え、中島万依さんは「計画当初から関わった事業を通じて、災害を防ぐことができた時」と回答した。
また、今の仕事を選んだきっかけについて、志多組の廣瀬さんは、自身が生まれ育った地域が自然に囲まれていたことから、「自然の中で働きたかった」と回答。仕事で辛かったことについて、現場博士の具志堅さんは「最初は分からないことだらけだったが、先輩や仲間のおかげで徐々に乗り越えることができた」と答えた。
松永博士は、「これから沢山の仕事を学ぶと思うが、どんな仕事も社会の役に立っている」として、何事も恐れずにチャレンジするよう、生徒達に呼び掛けた。
参加した6年生の生徒は、「将来は別のことをしたいと思っていたけれど、今日の授業や体験を通じて、砂防のこと、建設のことをもっと知りたいと思った」と話した。女性部の宮島会長は、担い手の確保・育成が喫緊の課題である建設業の現状を踏まえ、「建設業を正しく理解し、興味や関心を持つきっかけになれば」と期待を込めた。