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九州初、公共土木で3Dプリンターを活用 旭建設

      

▲写真は挨拶する木下専務、見学会の模様、「土木の道」ベンチ

 旭建設株式会社(黒木繁人代表取締役社長)は、1月24日に日向市内の同社駐車場で建設用3Dプリンターを活用した現場見学会を開催した。見学会には、国や地方自治体、関連企業から100人を超える技術者らが参加。同社は、九州地方では初めて、公共事業で建設用3Dプリンターを活用した土木構造物を造形している。

 高齢化等に伴う人手不足や社会インフラの老朽化に加え、週休二日制の完全実施、時間外労働の上限規制への対応といった課題に対応するため、同社は省人化・省力化や工期短縮を実現する建設用3Dプリンターの本格導入を見据える。こうした取り組みの一環として、技術の特徴やメリットを広く知ってもらおうと、見学会を開催した。

 建設用3Dプリンターでは、3次元データに基づいてモルタルを積層し、構造物を造形する。従来、コンクリート構造物を製造する上で不可欠な型枠等の工程や準備等を必要とせず、モルタル練り混ぜから造形を自動で行うことで、省人化や省力化、工期短縮といった施工性の向上を実現する。

 同社が施工する宮崎県児湯農林振興局発注の復旧治山事業竹元谷(西米良村)の地すべり対策工事では、建設用3Dプリンターを活用し、法面の不陸等を調整する法面構造物「ざぶとんわく」を造形した。

 見学会で同社の木下哲治取締役専務は、複雑な斜面や急峻な地形での法面構造物の施工は、作業従事者にとって重労働であり、かつ熟練度が求められることから、技能者の負担軽減や担い手不足の解消が必要であると指摘。

 「ざぶとんわく」を例に、10基当たりの施工日数が従来工法で13日(必要人員33人)必要であることに対し、建設用3Dプリンターを活用すれば、これが8日(必要人員12人)に短縮され、64%の省人化を図ることができるとする検証結果を報告した。

 建設用3Dプリンターを活用したメリットとして、「データを基に機械が自動で造形する無人化施工(省人化)」「掘削等の現場施工との並行作業、雨天時の作業が可能(工程短縮)」「必要最低限の材料で型枠や端材が発生しない(廃棄物削減)」「現地に合わせた複雑な形状への対応が可能(自由なデザイン性)」などを挙げた。

 建設用3Dプリンターの低価格化や鉄筋構造物への対応など、いまだ課題は残されているものの、今後の技術の進化や工夫改善により、解決できる課題であるとした。

 今回使用したPolyuse製の建設用3Dプリンターは、積層されるモルタル同士の付着強度が高く、空洞が生じないため、一体の構造物として十分な強度有していることを、積層供試体の強度試験で確認している。

 見学会の参加者は、事前に造形した「ざぶとんわく」のほか、3次元データを基に特殊なモルタルを少しずつ積み上げ、同社が掲げる「土木の道」をモチーフとしたベンチが造形される様子を見学し、写真に撮ったり、実際に触れて硬さなどを確かめていた。

 作成したベンチは、同社の玄関に展示する予定。木下専務は、「建設分野のDXは、現場の生産性向上を図る上で急務。様々なDX技術の効果等を検証し、これらの社会実装に力を入れていくことで、若者に魅力ある業界にしていきたい」と話した。