▲HaSAのアイコン
「より質の高い安全を実現し、建設業を魅力的な産業に発展させていきたい」。
こうした思いから、株式会社坂下組(坂下利博代表取締役社長)は、建設工事の作業所における安全衛生管理に必要な事項を分かりやすくまとめた「Health&Safety Action」(略称=HaSA)を作成し、昨年7月から運用している。現場の危険箇所や仮囲いに、視覚に訴えるアイコンを貼り出し、作業場で働く全員に対して、リスクアセスメントを含む安全衛生活動の確実な実践を訴えている。
HaSAは、坂下組が取り組んできた安全重要推進事項(昨年から安全衛生基本実施事項に変更)を更に分かりやすくまとめたもの。①三大災害②その他の災害③ばく露系④健康系―の4分類について、それぞれ3件ずつ、合計12種類のアクションとして整理するとともに、その前提となるリスクアセスメントの重要性を訴えている。
HaSAでは、身体的な事故だけでなく、昨今重要視されている化学物質やアスベストの取り扱い、熱中症・感染症に至るまで、安全衛生に関する様々なリスクを網羅。経験の浅い作業員や外国人労働者を含め、現場で働く全ての作業従事者にアクション及びリスクアセスメントの実施を視覚的に訴えることができるよう、アイコン化した。
アイコンに添えた文も「やさしい日本語」による簡易な表現を用い、伝わりやすさにこだわっている。従来の安全衛生管理では、重要な事項が文章で説明されることが一般的であるのに対し、HaSAではこれらがイラスト化されていることから、外国人労働者をはじめ多様化する作業所における安全衛生活動の推進に力を発揮する。
三大災害のアイコンを見ると、墜落・転落災害では人が落下するイラストに「落ちそうな所を特定しよう。」、重機災害では重機とカラーコーンのイラストに「重機・クレーンの周辺作業は慎重に。」の説明文を添えて注意喚起。同様に、飛来・落下災害や転倒災害、石綿障障害等に対しても、イラストと説明文で対策の徹底を呼び掛けている。
アイコン化にあたっては、中小企業や地域活性のブランディングを手掛ける株式会社KOZAKIKAKU(小崎直利代表取締役)に制作を依頼。伝わりやすさや視認性、運用方法について議論を重ね、デザインを決定した。小崎氏は、「アイコンを使用する現場が、よりクリエイティブで整然とした環境になることを願っている」と期待を込める。
坂下組では、これらのアイコンを現場の危険個所への掲示や安全看板・現場事務所内での表示、安全資料などとして活用している。一方で、「自社のみならず、世の中の全ての建設工事作業所から事故がなくなってほしい」という思いから、HaSAのアイコンは坂下組のウェブサイトで一般公開しており、著作権フリーで活用できる。
HaSAの企画者である坂下利一郎常務取締役は、「人間尊重」の理念の実現を目指すとした同社の安全衛生方針の一文が、「国籍や年齢、性別に捉われず、多様な人材を取り込もうとする建設業界にとって重要な視点となった」と指摘。「HaSAを通じて、建設作業に従事する全ての人達とともに、より質の高い安全な職場を作っていきたい」と意気込みを語った。
詳細はウェブサイトhttps://www.sakashita-gumi.jp/で確認できる。各アイコンの内容は次のとおり。
▽三大災害=①墜落・転落災害防止対策の徹底②建設機械・クレーン等災害防止対策の徹底③倒壊・崩壊災害防止対策の徹底
▽その他の災害=④飛来・落下災害防止対策の徹底⑤転倒災害防止対策の徹底⑥交通労働災害防止対策の徹底
▽ばく露系=⑦石綿障害予防対策の徹底⑧粉じん障害防止、振動・騒音障害予防対策の徹底⑨化学物質等の危険有害性防止対策の徹底
▽健康系=⑩熱中症予防対策の徹底⑪感染症感染防止対策の徹底⑫健康障害防止対策、メンタルヘルス対策の徹底。