▲写真は挨拶する藤巻局長、式典の模様
国土交通省九州地方整備局が整備を進めていた東九州自動車道の清武南IC~日南北郷IC間(17・8㎞)が、3月25日に開通した。災害発生時に通行止めのリスクがある国道220号の代替道路として、日南市と宮崎市が初めて高速自動車国道で繋がった。同日に日南市内で開通式典を行い、約17年をかけた事業の完成を祝うとともに、「さらに南へ」を合い言葉に、東九州道の全線開通に向けて気勢を上げた。
東九州自動車道の一部を形成する清武JCT~北郷間は、宮崎市の清武ICから日南市の日南北郷ICまでの19㎞を結ぶ高速自動車国道。新直轄事業方式で国土交通省が整備していた。区間内には、橋梁14箇所やトンネル12箇所などの構造物を設置。12年に開通した清武JCT~清武南ICを含む全体事業費は1622億円。
並行する国道220号では、一部区間で異常気象時に事前通行規制を行っており、過去15年間で79回の全面通行止めが発生。21年の斜面崩壊時には、35日間の通行止めが発生した。今回の開通に伴い、災害に強いネットワークの構築に加え、安全・安心な救急医療体制の確保、広域周遊観光ルートの形成といった効果も期待される。
特に難工事となった芳ノ元トンネル(延長1880m)では、掘削開始後に日南層群に起因する地すべりが発生し、開始から1年余で掘削を中断。学識者等による検討会で対策工法を検討し、線形の見直しや頭部排土工、地下水排除工の実施、先進導杭や掘削補助工法を追加するなどして掘削を再開し、着手から9年余をかけて貫通させた。
25日の開通式典で式辞を述べた九州地方整備局の藤巻浩之局長は、地権者や地元住民、芳ノ元トンネルの地すべり対策工法等を検討・アドバイスした学識者ら、安全第一で設計・施工にあたった建設コンサルタント及び建設業者など、すべての関係者の尽力に感謝の意を示すとともに、早期の全線開通へ注力していく考えを示した。
宮崎県の河野俊嗣知事は、当該区間の開通を喜ぶとともに、「これがゴールではない」と指摘。さらに南へと繋げるべく、事業中区間の早期完成や未事業区間の早期事業化を目指し、関係者が一丸となって取り組む必要性を訴えた。宮崎市の清山知憲市長は、今回の開通に伴い、防災や医療、観光の面で大きな効果が期待できると述べた。
来賓祝辞では、古川禎久衆議院議員、渡辺創衆議院議員、武井俊輔衆議院議員、松下新平参議院議員、長峯誠参議院議員、外山衛県議会議員がそれぞれ挨拶。雨天のため、会場内でテープカットとくす玉開披で開通を祝い、道路パトロールカーや救急車、自衛隊車両、地元企業のトラックが通り初めを行う模様をライブ映像で鑑賞した。
式典後には、関係者が車両やバスに搭乗し、地元住民や設計・施工の関係者が沿道から見守る中、開通区間を通行するパレードを行った。パレードを見守った日南市在住の男性は、特に、日南市から宮崎大学医学部附属病院等への救急車での搬送時間が短縮されることを踏まえ、「多くの人命救助に役立つ命の道になる」と完成を喜んだ。