▲写真は定例会の模様
宮崎県建設業ICT推進コンソーシアム(黒木繁人会長)は11月28日、宮崎市内で2023年度の定例会を開催した。定例会には、会員企業の代表や技術者ら約70人が参加。ITとコミュニケーションスキルで現場を支援する新たな職域「建設ディレクター」に関する講演を行い、企業の導入事例や導入効果などを紹介した。
建設ディレクターは、現場技術者が行っている施工データの整理や処理、提出書類の作成、写真測量や3次元設計といったICT業務を担い、現場技術者をバックオフィスから支援する人材。専門スキルを身に着け、現場とオフィスをつなぎ、支援することで、技術者が品質管理や技術の継承などに集中できる環境を構築する。
講師を務めた一般社団法人建設ディレクター協会の田辺直子理事は、デジタルや見える化をツールとして活用し、企業の技術力や内製化を図ることが建設ディレクターの目的であることを説明。技術者の書類業務の軽減やチームで成果をつくる組織づくり、新しいキャリアパスや働き方・雇用創出といった効果が期待できるとした。
田辺理事は、キーワードに「つなぐ」を掲げ、建設ディレクターをハブ的な存在として、チームで現場を管理するメリットを指摘。また、建設ディレクターに移管する業務の選別や受渡方法を支援するなど、早期の建設ディレクターの定着と業務連携の仕組化を構築する業務連携プログラム「TEAM SWITCH」を紹介した。
同プログラムを活用して建設ディレクターの導入・定着に取り組んでいる日新興業株式会社の発表では、河野孝夫代表取締役が導入に至った経緯を説明。登壇した同社の若手現場代理人は、書類業務に時間がかかり、時間外勤務が増加することや、女性技術者としての結婚・出産、キャリアアップに対する不安を従来の課題に挙げた。
また、普通科高校や商業高校を卒業し、建設ディレクターとして現場をサポートしている女性2人の発表では、業務未経験者でも分かるマニュアルづくりや建設ディレクター間での情報共有、書類作成時に心掛けていることを紹介。女性ならではのライフイベントとキャリアを両立できる建設ディレクターの可能性を伝えていきたいと話した。
約5年前から建設ディレクターを導入しているヤマグチ株式会社(鹿児島県霧島市)の山口秀典代表取締役副社長は、同社の事例を踏まえた具体的な導入の流れや育成時に取り組んだことを説明。第一線で活躍していた40代の現場監督を現場から引き上げ、ICTやDX、教育責任者、建設ディレクターの育成に専任したことを説明した。
山口副社長は、3割程度の書類作成業務の移管でも、残業時間が大幅に減少し、現場と社内の連携意識が向上したといった導入効果を紹介。建設ディレクターは単なる現場補助者ではなく、あくまで現場の負担を軽減する「専門職」であること、ただ指示するだけでなく、しっかりと内容を説明することを導入・定着のポイントに挙げた。