▲解体作業の模様
1970年、東洋一の超高層ビルとして、当時の技術の粋を集めて完成した世界貿易センタービルディングの解体が進んでいる。東京・浜松町駅に隣接する地上40階建て・高さ162m。国内で解体される建物としてはこれまでで最も高い。高層からの解体ガラの落下や粉じん飛散などのリスクの低減と工期短縮のため、スラッシュカット工法という新工法を導入している。施工者の鹿島が7月13日、現場を報道機関に公開した。
「鹿島スラッシュカット工法」では、上層階からスラブや大梁などの構造物を大割のブロックに切断。建物内部に設けた12×9mの大型揚重開口内をタワークレーンで吊り下ろし、地上で小割に解体する。
床スラブの切断は、密閉された建物内部で先行させ、新開発の「斜め切断カッター」を使う。くさび形状に斜めに切ることで、隣接するスラブが荷重を支えるため、落下を防ぐ支保工の必要がなくなる。同ビルの外周には、鉄骨が3mピッチで配置されており、従来工法では大量の支保工が必要になるため、対策として考案した。
今回の施工ではこのほか、「スラブ切断兼吊上げ治具」と「4点自動吊上げ装置」を新たに開発した。スラブ切断兼吊上げ治具は、切断時の荷重に対してスラブを補強するとともに、吊上げの際の曲げ破壊を防ぐ。4点自動吊上げ装置は、タワークレーンで大割ブロックを揚重する際に水平を保つ。作業員の高所作業を減らすとともに、遠隔操作でブロックの姿勢を制御し安全を確保する。
これらの新技術によって工期も短縮。在来工法では7日かかる1フロアの解体を5日で行う。また、建物頂部に重機を載せて躯体を粉砕する在来工法と比べ、粉塵の飛散がなく、騒音も発生しないほか、CО2排出量を18%減らす。
2021年8月に着工。現在、34階部分の解体を進めている。工期は23年3月まで。
超高層建築の解体が今後増加すると見込まれる中、同社では、施工条件によって、同工法と、下層階から解体する「カットアンドダウン工法」を使い分けて対応するとしている。