延岡市は、市立岡富中学校に設置されているカラミレンガ塀の耐震診断結果を踏まえ、耐震補強案に関する一定の方向性を示した。当該地区が景観形成重点地区に指定されていることや施工のし易さ、費用等を考慮し、現在のカラミレンガ塀をコンクリートで補強し、今後も適切に維持・保存していく方針を示した。
岡富中のカラミレンガ塀(延長=122m、高さ=歩道側2.1m、学校側1.16m)は1915年に建造され、100年以上も市民に親しまれてきたが、耐震診断の結果、震度5程度の地震が発生した際に倒壊する危険がある。市は、専門的な知見を有する調査機関に委託し、保存の可能性や方法等について調査を行ってきた。
このうち、レンガ塀の補強に関しては、道路側からの景観を維持するため、学校敷地内側を鉄骨部材またはコンクリートで補強する2案について検討。
鉄骨部材による補強では、既存のレンガ塀の不陸に合うように部材を設置する必要があり、工事の難易度が高くなるほか、部材で部分的にレンガを支えるため、目地補修やレンガの部分的な積み直しが必要となる。概算費用は8800万円。
コンクリートによる補強では、一般的なコンクリート擁壁と同様の手法で施工可能なため、工事の難易度は鉄筋部材よりも低くなる。また、コンクリートで面的にレンガ塀を支えるため、目地の補修程度で済む。概算費用は5000万円。
耐震補強以外では、既存のレンガ塀を撤去し、景観に配慮した木塀を設置する工法を検討。東京都が策定している「国産木材を活用した塀等の設置ガイドライン」を参考に、概算費用を6039万円、20年毎の維持費を3018万円と試算する。
これらの検討結果に加え、当該地区が延岡市都市景観条例における景観形成重点地区(城山周辺地区)に指定されていることを踏まえ、カラミレンガ塀のある現在の景観を保全することを重視し、市として「コンクリートによる補強」でカラミレンガ塀を適切に維持・保存する方針を示した。
市がまとめた耐震補強案の概要は、ホームページや情報公開センター、各支所などで公開し、市内居住者を対象に3月10日まで意見を募集する。