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流域治水へ転換、各水系で協議会設置 今年度末に対策公表

▲写真は会合の模様

 国土交通省と宮崎県、大淀川水系及び小丸川水系の流域市町らで構成する「大淀川水系流域治水協議会」と「小丸川水系流域治水協議会」が9月28日に設置された。会合では、河川での対策、集水域での対策、氾濫域での対策を盛り込んだ流域治水プロジェクトの中間とりまとめ案などを確認した。2021年3月頃にプロジェクトを策定・公表する予定でいる。

 気候変動で激甚化・頻発化している自然災害から国民の生命を守るため、国交省は今年7月に「総力戦で挑む防災・減災プロジェクト」をまとめた。国・地方自治体・企業・住民で治水対策に取り組む「流域治水への転換」をプロジェクトの柱に位置付け、2020年度中に全国の一級河川で流域治水プロジェクトを開始する。

 あらゆる関係者で流域全体の治水対策を進める「流域治水への転換」では、河川区域内や氾濫域に限って進めていた治水対策を流域全体での対策に見直し、河床掘削や砂防堰堤の整備等の河川区域内での対策に加え、雨水貯留浸透施設の整備、土地利用規制、二線堤の整備など、ハード・ソフト一体の事前防災対策を加速させる。

 会合では、九州地方整備局管内に於ける20年7月豪雨の概要や対応、協議会の規約、今後のスケジュールを説明。流域治水の具体例として、防災調整池や雨水貯留施設、ため池の治水活用のほか、水災害リスクを低減させるための制度、土地利用と一体となった輪中堤や霞堤、浸水エリアを限定するための二線堤などを紹介した。

 19年の東日本台風で戦後最大を超える洪水により甚大な被害が発生したことを踏まえ、大淀川水系流域治水プロジェクトの中間とりまとめ案では、国管理区間に於いて05年9月洪水と同規模の洪水を安全に流下させるとともに、あらゆる関係者が協働して、流域における浸水被害の軽減を図るための対策を講じるとした。

 具体的には、河道掘削や堤防及び護岸整備、大岩田遊水地の整備、岩瀬ダム再生事業等の河川における対策を推進。また、関係機関と連携しながら、土地利用の規制や誘導、避難路・復旧路の整備、排水ポンプ車による排水計画の策定、浸水時の公共施設・ライフライン等の機能維持といった流域における対策とソフト対策を検討する。

 一方、小丸川水系流域治水プロジェクトの中間とりまとめ案では、04年8月洪水と同規模の洪水を安全に流下し、これを上回る05年9月洪水と同規模の洪水に対して堤防からの越水を回避するため、河道掘削や堤防整備、宮越排水機場の整備、橋梁架替等を推進。大淀川水系同様、流域における対策やソフト対策を検討する。

 両協議会のアドバイザーを務める宮崎大学名誉教授の杉尾哲氏は、治水対策と都市計画の連携について言及。市町村に河川の専門技術者が不足していることや、そういった中で進められてきたこれまでの都市計画に於ける治水安全度の確認の経緯を踏まえ、「治水と都市計画、まちづくりのあり方を考えてもらいたい」と訴えた。

 両協議会では今後、各機関の実務者で組織する幹事会を随時開催し、今秋に流域治水プロジェクトの中間とりまとめを公表する。その後、21年3月に2回目の協議会を開催し、流域治水プロジェクトを公表する予定でいる。

 県内のこの他の一級河川では、8月24日に五ヶ瀬川水系流域治水協議会を設置し、同日に第1回の協議会と幹事会を非公開で同時開催した。また、7月28日に設置した川内川水系流域治水協議会は、9月29日に2回目の協議会を開催し、流域治水プロジェクトの中間とりまとめを公表している。