国土交通省は、ICT施工で得られるデータをクラウドシステムに蓄積し、発注者や中小建設業が共有できる環境を整える。直轄工事のCランクでICT施工の受注実績のある企業が全体の半数にとどまっており、データ共有でこうした未経験企業の底上げを図るのが狙いだ。ICT企業にクラウドシステムに蓄積した施工データを提供するアプリケーションの開発を促し、未経験企業のICT施工の経験値を補ったり、初期投資の負担軽減につなげる。
直轄工事でこれまでにICT施工の受注実績のある企業は1450社。一般土木工事の等級別に受注実績のある企業を見ると、Aランクは93.5%、Bランクは89.8%だが、Cランクは50.9%、Dランクは21.3%で企業規模によって実績に大きな差がある。
国交省が直轄工事の受注者や建設業協会の会員企業に行ったアンケート調査によると、ICT建機や測量機器への投資やコストを課題に挙げた企業が全体の56%、人材育成・理解度不足と回答した企業が22%だった。
国交省は、小規模工事の積算基準を見直して採算性を改善したり、3次元データを一部の工程で活用しないことを認める「簡易型ICT活用工事」を導入する一方、地方自治体や中小建設業に対する講習会や現場見学会などを通じた技術支援も行っている。
こうした普及拡大策に加え、ICT施工で得られたデータを国・自治体などの発注者と中小建設業をはじめとする受注者が共有するためのクラウドシステムも構築。ICT施工で得られた3次元モデルなどの施工データをクラウド上に蓄積できるようにする。
国交省はこのクラウドデータを共有するため、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)の標準仕様を定め、この仕様を満たしたアプリケーションの開発をICT企業に促す。
クラウドに蓄積された施工データを活用し、▽出来高管理▽出来形管理▽工程・品質管理▽資機材管理▽遠隔操作▽稼働時間管理▽人員管理▽安全管理―などをサブスクリプション方式(製品・サービスを一定期間ごとの利用料で提供するビジネスモデル)で提供することを認める。
こうしたサービスの提供によってICT施工の標準化を進め、未経験企業の初期投資や人材育成の負担を軽減。現場の作業時間短縮など、生産性向上の効果を得やすい環境を整える。
■自治体発注のICT土工、前年度の2倍に
ICT施工を中小建設業に普及させるためには、発注者である地方自治体への定着も不可欠だ。国土交通省は、ICT施工に取り組む自治体・中小建設業に対するサポート体制を強化している。2019年度の都道府県・政令市のICT土工の実施件数は1136件で、前年度の2.2倍に増加している。
都道府県・政令市のICT土工の実施件数は、17年度に291件、18年度に523件、19年度に1136件と毎年倍増している。
国交省がまとめた都道府県別のICT土工の実施状況によると、19年度にICT土工の実施件数が最も多かったのは静岡県の120件。静岡県は、県内の市町や建設業団体、ICT関連メーカーなどで協議会をつくり、県発注のICT施工の運用に反映。19年度には、i-Construction大賞の大臣賞も受賞している。
宮崎県の実施件数は30件で、全都道府県中10番目に多かった。
>>TOPへ戻る