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電子申請を推進、掛金充当履行確認を強化 建退共

 勤労者退職金共済機構建設業退職金共済事業本部(建退共)は6月30日、公共工事での建退共制度の新たな履行確保策を運営委員会・評議員会に付議し、承認された。掛金の納付状況を透明化する電子申請方式を推進するほか、履行確認を強化するため、受注者が発注者に提出する「掛金収納書の提出用台紙」や「掛金充当実績総括表」を新設する。2021年4月から実施する考えだ。

 新設する「掛金収納書の提出用台紙」に受注者は、掛金収納書を添付するとともに、当該工事での共済証紙購入の考え方を記載し、発注者に提出する。

 また「掛金充当実績総括表」では、工事完成後、労働者の延べ就業日数や掛金充当日数などを発注者に提示する。

 さらに受注者は工事完成後1年間、①掛金充当実績総括表②掛金充当状況を示す資料③労働者の就労状況を示す資料―を事務所に備え付けることにする。

 掛金充当状況を示す資料としては、証紙貼付方式のケースで使用する「工事別共済証紙受払簿」も新たにつくる。

 また、建退共の対象となる労働者の的確な把握と、対象労働者に対する確実な掛金充当を推進するため、これまで実務上使用される例のあった「辞退届」に代わるものとして、「加入労働者数報告書」の様式を機構が定める。

■掛金納付電子申請試行、17日から参加募集

 勤労者退職金共済機構建設業退職金共済事業本部は、掛金納付の電子申請方式の試行的実施で、7月17日から参加企業の募集を開始する予定だ。10月から試行を開始。2021年3月に電子申請方式の全面的・本格的実施に移行する方針でいる。

 試行への応募資格は、インターネットやATMを使うペイジーか、口座振替によって、証紙に代わる退職金ポイントを購入できることや、下請企業と労働者も試行に参加できることなど。8月末まで参加希望を受け付け、9月に参加企業を決定し、被共済者一覧表などの必要書類の提供を依頼する。元請けの参加企業数としては約150社を上限に考えている。

 10月に、参加企業にIDとパスワードを送付するとともにコールセンターを開設し、試行をスタート。参加企業は、既に無償提供している就労実績報告作成ツールを使って就労実績の蓄積を開始する。試行の開始から1カ月後、電子申請システムを供用し、電子申請による就労実績報告の受け付けや退職金ポイントの充当を開始する。

 建退共の電子申請方式では、就業実績報告作成ツールを建設キャリアアップシステム(CCUS)と連携させ、下請けの事務作業を効率化する。

 連携機能は段階的に拡充する。現在は共済契約者(元請け、下請け)が就労実績をツールに直接入力するかたちだが、20年内に下請けがCCUSからデータを出力し、そのデータをツールに入力できるようにする。

 さらに21年以降、下請けだけでなく、元請けや一次下請けもCCUSからデータを出力して入力できるようにする。

■21年10月からの予定利回りを引き下げ

 勤労者退職金共済機構建設業退職金共済事業本部は、2021年10月1日から適用する建退共の予定運用利回りを「1.6%以上1.8%以下」から「1.3%以上1.5%以下」に引き下げることにした。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2019年度の運用成績が悪化したことに対応するもの。6月30日に開いた運営委員会・評議員会で承認された。掛金日額の310円から320円への引き上げとともに厚生労働省に要望する。具体的な利回りは同省の労働政策審議会の部会で審議し、政令で定める。

 建退共では3月の運営委員会・評議員会で、21年10月1日から掛金日額を320円に引き上げるとともに、予定運用利回りを現在の3.0%から「1.6%以上1.8%以下」に引き下げることを決めた。

 しかし今回の感染問題の影響で、19年度の運用成績が31億円の赤字となり、給付経理の当期損失が214億円に上った。これに伴い759億円の見通しだった累積剰余金の実績は、129億円下方修正して630億円となった。

 こういった状況を踏まえ、新たな予定運用利回りをさらに引き下げることにした。予定運用利回りを「1.3%以上1.5%以下」にした場合、必要な累積剰余金の水準は914億円~952億円となる。