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2022年の完成目指し本体着工へ 野口遵記念館建設計画

野口遵記念館建設実施設計概要   B00060432_2   B00060432_3

▲新施設の外観、ホール内部、内観イメージ

 延岡市は、現在地に建て替えで整備する野口遵記念館の施設概要をまとめ、ホームページで公開した。新施設は鉄筋コンクリート造一部鉄骨造で地上3階建、延床面積は約4363m2。675席を有するホールや野口遵翁顕彰ギャラリー、フリースペース・練習室などを配置する。設計は香山・小嶋・菊池・松下・コトブキ・オーツ特定建築設計共同体が担当した。6月19日付で新施設の建築主体工事や電気設備工事、空気調和設備工事、舞台機構設備工事を公告しており、7月31日に開札する。

 経年に伴う躯体や設備の老朽化が進み、抜本的な対策が急務となっていた旧延岡市公会堂野口記念館を現在地(延岡市東本小路119-1)に建て替える計画。市民に長く愛されてきた野口記念館の佇まいを継承しつつ、先進的な機能とデザインを採用することで、市民が新しい「わたしたちの拠点」と感じられる施設の整備を目指す。

 明確な配置計画や動線計画、分かり易いユニバーサルデザインをはじめ、施設内には居心地の良いフリースペースや練習室などを配置。先進的な性能を持つホールとあわせて、文化芸術活動の創造・活性化を促すとともに、子ども達が一流の芸術に触れることで、地域に誇りを持ち、将来の地域づくりを担う人材育成の場とする。

 景観計画によると、シンボルロードや市役所に面した東面は、旧野口記念館の大きなガラス面と白い門型による端正な佇まいを踏襲し、城山文化エリアの「門」となる象徴的なデザインを採用する。北面及び南面にも門型を形成し、城山側と駐車場側にも表情をつくる。コンクリートの打放し壁の一部に、延岡杉の型枠を採用する。

 景観条例上の限界高さまで突出する劇場のボリュームは半透明のガラスで覆い、劇場から漏れる照明が水郷延岡の伝統「流れ灌頂」をイメージさせる。市役所やシンボルロード、テラスと内部空間が容易に繋がるよう、開放可能な建具を使用する。

 明るく上品なホールは、二層分の高さの壁が客席の三方を取り囲み、親密な一体感のある空間を形成する。壁面には、市産材を利用した木ルーバーを全面的に設置。延岡の伝統的風景である「鮎やな」をモチーフとした木ルーバーは、音を拡散させ、豊かな音響をつくりだすと同時に、木の素材感が温もりのある優しい印象をつくりあげる。

 客席椅子は、十分な前後・左右幅を確保しつつ、劇場としての一体感を感じられる寸法配置とした。ゆったりした座り心地を目指し、生地は布とメッシュの二重素材、内側の布地にグラデーションのプリントをほどこした席をランダムに配置することで、延岡の風物詩である「流れ灌頂」の風景を彷彿させる意匠計画とした。

 フォロースポットレベルより上部はハイサイドライトとし、自然光を取り込むことが可能な計画とする。自然光の取り入れは、客席の明るさと快適性を高めるだけでなく、清掃時に照明をつける必要がなくなるため、省エネルギー化も期待できる。天井は、音響拡散効果を高めるために、波打つように連続する曲面形状とした。

 建物全体のロビーである「野口遵どおり」「ごかせどおり」「おおせどおり」は、南北と東西方向からアクセスでき、各所にたまり場を設ける。とおりには延岡産の杉材やヒノキ材を利用。南面の玄関ロビー空間に野口遵翁の胸像を配置し、胸像から野口遵どおりを北に歩くと、野口遵翁を顕彰する展示ギャラリーに繋がるようにする。

 来館者の目の触れやすい位置に配置する野口遵翁顕彰ギャラリーでは、野口遵翁の人物像の紹介を中心に、延岡で事業展開するに至った由来や、延岡が工業都市として発展していく黎明期の姿などを伝える。展示パネルを兼ねた移動間仕切りを設け、これを開放することで、イベントや休憩スペースとして活用することもできる。

 フリースペース・練習室は、様々なイベントや多目的な市民活動、各種会議、学習スペース、特別企画展、会合等に利用し、小規模な舞台芸術公演や電気音響を使用した音楽催物、公演のリハーサル室や大楽屋としての利用、練習・稽古等のほか、パーティーやレセプション、学会、展示会場など様々なジャンルの催物が開催可能な空間とする。

 ロビーと外部に対して遮音性能を確保した二重のガラス戸は開け放つことができ、練習室とフリースペース、交流ラウンジが一体となったイベントを開催することができる。また、フリースペースは大きな移動間仕切りで分割することができ、小規模な催しや楽屋としても利用しやすくした。

 地上階と最上階には、城山やシンボルロードと「見る・見られる」の関係にある外部テラスを設けた。地上階は、屋外イベントなどの会場や練習室と一体化した利用で、賑わいの仕掛けをつくる。最上階は、城山の三階櫓跡などを眺める憩いのスペースとして、また、まつりイベント実施時の新たな賑わい拠点スペースとして活用する。

 外部テラスにつなげて、デッキと緑化を用いた屋上庭園を配置。市民の普段の憩いの場として、また小規模な屋外イベントが行えるようにした。

 延岡市の発注見通しでは、第2四半期に給排水衛生設備工事や自動制御工事、第3四半期に舞台照明設備工事や舞台音響設備工事を発注する方針。施設整備の財源には、旭化成からの寄付金30億円を充てる。旧野口記念館は同社が創業30周年を記念して、1955年に寄贈した施設。同社の創業100周年、延岡市の市制施行90周年を見据え、2022年に新たな施設に生まれかわる。