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CCUS、義務化へ道筋 「あらゆる工事」で全面実施

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▲CCUS完全実施に向けた道筋

 国土交通省と建設業4団体は3月23日、2023年度までに公共工事、民間工事を問わず、あらゆる工事で建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用を目指すことで合意した。建設業退職金共済の掛金充当や社会保険加入(労働者単位)の確認にCCUSを活用することを原則化。直轄工事では、20年度から「CCUS義務化モデル工事」を実施し、事業者・技能者登録や就業履歴蓄積の達成に応じ、工事成績への加点・減点を行う。

 赤羽一嘉国交相ら国交省幹部と▽日本建設業連合会▽全国建設業協会▽全国中小建設業協会▽建設産業専門団体連合会―の4団体が23日に意見交換会を開き、23年度からの「あらゆる工事でのCCUS完全実施」を目指すとした「官民施策パッケージ」を推進することで一致した。

 国交省は建退共について、元請けが購入する共済証紙が下請けに交付されず、技能者の退職金に適正に充当されていないケースを問題視しており、21年度からCCUSの就労履歴データを活用した掛金納付の電子申請方式を本格的に実施する。

 公共工事では、21年度からCCUSの就業履歴データの掛金充当への活用を原則化する。元請けにはCCUS活用か証紙方式を選択してもらい、証紙方式を選択した元請けには、新たに工事別受払簿の作成・提示を求めるなど、掛金充当の履行確認を強化する。必要に応じ、許可行政庁の指導の対象にもする。

 民間工事でも、CCUSを活用した掛金納付・充当を徹底し、23年度からは公共工事・民間工事でCCUSを活用した掛金充当の確認へと「完全移行」する。

 労働者単位での社会保険加入確認には、今夏に「社会保険の加入に関する下請け指導ガイドライン」を改訂し、元請けにCCUSに登録した真正性の高い情報で確認するよう求める。書面で加入確認を行う場合は、標準報酬月額決定通知書などの確認が必要であることを明確化する。

 直轄工事では、20年度からWTO対象の一般土木工事で「CCUS義務化モデル工事」を試行する。カードリーダーの設置、事業者・技能者登録率、就業履歴蓄積率の達成状況により、工事成績を加点、減点する。

 この他、CCUS本体の利便性の向上にも取り組む。登録した技能者の引き抜きに対する懸念を払しょくするため、企業の電話番号・メールアドレスでも技能者登録できるよう、運用を見直す。労働安全衛生法上の資格者情報とCCUSをマイナポータルを通じて連携し、資格者証の携行義務を一本化する。

■直轄で義務化モデル工事 工事成績で加点・減点

 国土交通省は、2020年度に発注する直轄工事で、建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用を義務付ける「CCUS義務化モデル工事」を試行する。モデル工事では、CCUSの活用を契約事項とし、下請けの事業者登録率、現場に入場する作業員の技能者登録率、技能者の就業履歴蓄積率の目標値を特記仕様書で条件明示。条件を達成すれば工事成績を加点する一方、達成しなかった場合は成績を減点する。

 義務化モデル工事の対象は、WTO対象の一般土木工事から選び、20年度に発注者指定型で約10件(各地方整備局1件程度)を試行する。

 モデル工事では、特記仕様書で▽CCUSの現場登録とカードリーダーの設置▽工事期間中の平均事業者登録率90%、平均技能者登録率80%▽工事期間中の平均就業履歴蓄積率(カードタッチ率)50%―の3点を条件明示。下請けや下請けが雇用する技能者の登録率と実際の就業履歴蓄積率の目標達成を契約事項と定める。

 条件明示した全ての項目を達成すれば、工事成績を1点加点する。平均技能者登録率が90%を超えると加点幅を2点に拡大する。ただ、三つの項目のいずれかで目標値を20ポイント以上下回ると、工事成績を1点減点する。

 発注者指定型の義務化モデル工事に加え、同じくWTO対象の一般土木工事で受注者希望型による「CCUS活用推奨モデル工事」も各地方整備局で3~4件を試行する見込みだ。推奨工事で目標を著しく下回った場合は、工事成績の減点に代わり、原因・改善策を元請けのホームページで公表してもらう。

 また、地元の建設業界の理解を得られれば、WTO対象以下の工事でもモデル工事を実施する。21年度以降、建設業退職金共済の掛金充当確認へのCCUS原則活用を踏まえ、段階的に対象工事を拡大する。