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[連載]ガードマンが足りない!⑦ 「求められる業界横断の対応」

 ある東京都内の建設業者はこう話す。「配置する警備員は6人だったが、警察との協議で9人に増え、増えた3人を確保できず、現場を止めた」

 しかし、現場を動かそうとすれば動かせない訳ではない。警備員1人を1時間4000円で手配してくれる会社がある。そんな会社に警備員を依頼するのだ。8時間で3万2000円になる。公共工事設計労務単価の倍を軽く超える。

 複数の現場を持つ建設会社は、常に余分に警備員を警備会社に依頼し、緊急の対応に回せるようにするなど対策を講じている。警備員が少なくて済む日があっても、一定の人数の警備員を毎日頼むようにしている現場もある。

 「今後、警備員の不足はますます深刻化する」と東京都内の建設業の経営者は懸念する。東京2020大会に伴う警備の需要が、警備員不足を一層加速させる可能性がある。「同一現場内での複数の警備会社による警備や、建設業者による自家警備の実施など規制緩和を進めるべきだ」と指摘する。

 東京都警備業協会が2018年9月に会員に対して行ったアンケートでは、約40%の会社が、建設会社に請求した料金に対して値引きの要請を受けていた。そして、その半数以上が、契約を切られることを恐れ、要請を呑んでいた。低価格で受注した公共工事で建設会社から値引きを求められるケースもあった。

 警備員が集まらない中、固定客の建設会社からの依頼を優先する警備会社が多い一方、飛び込み客に積極的に対応する会社もある。「過去から続く、われわれに不利な取引をやめない顧客を切り、適正な取引に応じる新規顧客を開拓するため」だという。

 東京都警備業協会では過去に、ある建設業団体と、キャンセルへの対応など取引の適正化について話し合おうと協議の場を持った。しかし、建設業側からは安全対策の担当者が出席し、「まったく話がかみ合わなかった」という。

 建設業と警備業が、交通誘導警備員の労務単価と就業環境などを巡る問題への認識を共有し、連携して対策に乗り出す必要がある。(地方建設専門紙の会・建通新聞社)

 =連載終了=