東京都内のマンション建設現場の現場監督は、ゲートに立つ警備員に信頼を寄せる。「積極的なあいさつなど、近隣に配慮してくれる。工事車両の運転手とのコミュニケーションも良好だ。現場を守ろうという意識が伝わってくる」
建設現場の外との接点に立って、重要な役割を果たす警備員だが、その報酬は安い。厚生労働省の2018年度の賃金構造統計調査によると、警備員の毎月の所定内給与は20万0100円。全業種平均の30万6000円の65%にとどまる。
3月から適用されている現行の公共工事設計労務単価の全49職種の全国平均は1万9392円だ。このうち警備員の単価は、高速道路や幹線道路での警備で必要になる国家資格である交通誘導警備業務検定1級か同2級の合格者である「交通誘導警備員A」が1万3682円、それ以外の「同B」が1万1998円といずれも平均と比べ低い。人手不足を背景に、最も引き上げ幅が大きかったが、警備員Bが全職種の最下位、同Aがその次だ。軽作業員の1万4351円より安い。
「若手の警備員が、作業員として建設業から引き抜かれることがある」と、ある都内の警備会社の経営者は苦笑する。
交通誘導警備員として実際に働く人が手にする報酬について求人サイトを検索すると、都内では日給9000~1万円程度が多い。アルバイト程度の収入だ。フルに働いても家族を養っていくことは難しい。その結果、警備業には、企業をリタイアした高齢者の再就職も多い。
警備業を所管する警察庁がまとめた『平成30年における警備業の概況』によると、40歳未満の警備員の構成比は全体の20.7%。40歳以上が約8割を占めている。また全体の29.8%が65歳以上の高齢者だ。
さらに気になるのは、70歳以上の警備員の構成比の増加だ。2年前の16年は9.6%だったが、18年は3.7ポイント増の13.3%になった。
「特に交通誘導警備は、高齢者を中心に、いまいる人の頑張りによって、ぎりぎりの状態で残っている」と、前出の経営者は今後を危惧する。(地方建設専門紙の会・建通新聞社)
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