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建退共の履行強化策を検討 不適切処理に指導・勧告も

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▲履行強化策の方向性

 国土交通省は、建設業退職金共済への電子申請方式導入に合わせ、公共工事で掛金充当の履行強化策を講じることを検討している。建設キャリアアップシステム(CCUS)を活用した「完全電子方式」や、勤労者退職金共済機構の「一部電子方式」の導入を見据え、発注者が「証紙方式」による掛金充当の履行確認を徹底。不適切に処理した元請けに対し、発注者から通報を受けた許可行政庁が指導・助言・勧告することも検討する。

 国交省は、技能者の処遇を改善する上で、賃金の上昇とともに、社会保険加入と退職金制度の充実を重要視している。赤羽一嘉国交相の指示を受け、3月下旬にまとめる「施策パッケージ」で、具体策の全容を示す。

 証紙方式を採用している建退共は、元請けが実際に購入する証紙が下請けに交付されず、技能者の退職金に適正に充当されていないことが課題だ。公共工事の積算では、現場管理費に掛金の財源が措置されているが、元請けが一括購入した証紙の購入数に比べ、過少に証紙が交付されている。

 国交省は、CCUSの就業履歴を活用した「完全電子方式」と、就業実績報告書作成ツールを活用した「一部電子方式」の導入を見据え、掛金充当の履行強化を検討している。

 履行強化を図ると、CCUSを活用した完全電子方式では、掛金充当の事務負担が最も軽減される。その他二つの方式では、契約時に発注者への掛金収納書の提出に加え、新たに事前納付額の算定根拠を提示を求めるが、完全電子方式は下請けがCCUSの施工体制登録を済ませれば事前納付は不要だ。

 現在、工事の完成時には、元請けが証紙受払簿を発注者に提示しているが、今後は貼付方式と一部電子方式では、事前納付額と掛金充当実績の整合性に関する根拠を提示してもらう。完全電子方式では、工事の進捗に応じて掛金を納付し、掛金収納書をまとめて提出することもできる。

 これらの履行強化策を通じて元請けの著しく不適切な処理を把握すれば、発注者は許可行政庁に通報する。許可行政庁がこの元請けに対し、指導・助言・勧告などの措置を講じることも検討する。

■全ての証紙交付、公共工事でも6割

 国土交通省が行った建設業退職金共済の運用状況に関するアンケート調査で、購入した全ての証紙を下請けに交付していると回答した許可業者は公共工事で64%にとどまった。下請けから就労実績報告が「ほとんどない(1割以下)」と回答した元請けが14%に上っており、国交省はこのことが証紙交付が徹底されない要因の一つになっているとみている。

 この調査は、昨年11月~12月に無作為で抽出した許可業者を対象に行ったもので、有効回答数は5471者。国交省は、建退共の証紙が技能者に行き渡らず、余った証紙がインターネット上やチケットショップで流通している現状を問題視しており、今回初めて運用状況を調査した。

 調査に回答した許可業者のうち、建退共に加入していたのは全体の72.5%。未加入の理由には「自社独自の退職金制度がある」が24.3%、「他の退職金共済制度に加入している」が46.0%、「いずれの退職金共済制度にも加入していない、または退職金制度がない」が29.8%だった。

 建退共に加入している元請けに就労実績報告の受け取りの有無を聞くと、全ての下請けから報告があると回答した元請けは公共工事で65%だった。民間工事では「ほとんど報告なし(1割以下)」と回答した元請けが58%と半数以上を占めている。