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県内5社が盛土高台の地盤改良施工 宮崎県総合運動公園

      

▲写真は地盤改良工事の、見学会の模様

 宮崎県が宮崎市熊野の総合運動公園に整備する津波避難施設のうち、盛土構造の避難高台整備に係る地盤改良工事が本格的に着工した。5工区に分けて行う地盤改良工事は、1工区を岡﨑組、2工区を旭建設、3工区を大和開発、4工区を松本組、5工区を龍南建設が担当。施工に際して、不動テトラとソイルテクニカが開発した深層混合処理工法「CI-CMC-HA工法」を県内で初めて採用している。

 スポーツランドみやざきの中心施設である総合運動公園は、年間約139万人が利用しており、二巡目国体の開催に向けて更なる利用者の増加が見込まれる。一方で、今後30年以内に大地震やこれに伴う津波被害が発生する可能性が高まっていることから、県は避難困難者が生じる可能性がある敷地内の各エリアに津波避難施設を整備する。

 このうち、第一陸上競技場を中心とするエリアには、盛土構造の避難高台を整備する。広さ約1・2㌶、地盤からの高さ約8mで、事業費は28億円程度。現地の地盤状況や施設の特性を踏まえた液状化対策として、地盤改良工事には国土交通省の新技術活用システムで2020年度の準推奨技術に選定されたCI-CMC-HA工法を採用した。

 同工法は、エアを用いてスラリーを霧状に噴出する「エジェクター吐出」機構の開発により、大径かつ高品質な改良体を造成する深層混合処理工法。霧状のスラリーが土をほぐし、土粒子の流動性を高めることから、貫入・撹拌の負荷が低減する。投入するスラリーに応じて撹拌域の土がスムーズに上昇するため、周辺の変位が少なくなる。

 撹拌翼の改善に伴い、N値50程度の砂質地盤からN値15程度の粘性土まで適用可能。吐出時のエア量を制御して、改良体強度のバラツキを抑制するとともに、硬質地盤の先行削孔が不要になったことから、工費の削減や工期の短縮を実現する。

 施工手順は、①施工機を所定の位置にセット②改良材を吐出しながら連続貫入③先端部が支持層に到達したことを確認した後、改良材の吐出を停止して先端処理を行う④撹拌翼を逆回転させながら引き抜く⑤地表面まで改良体を造成し、次の施工位置に施工機を移動―の5つのステップ。その後、同様の作業を繰り返していく。

 5つの工区のうち岡﨑組と旭建設の工区では、地盤改良工法に特化した施工管理システム「Visios-3D」を採用。深度や速度、流量、回転数等の施工状況をリアルタイムにアニメーションで表示し、現場や事務所で共有する。施工記録はCIMに対応した3次元モデルに図化され、現場全体を視覚的に評価できる。

 さらに旭建設は独自に、小型軽量のヘッドセットを装着した作業者視点の映像をモニターで確認できる「スマートグラス」を試験的に導入。リアルタイムで装着者視点の映像を確認し、作業品質や現場の生産性・安全性の向上を図る。将来的に、現場から配信された映像データを活用して監督・検査を実施する遠隔臨場にも活用していく考えでいる。

 9月25日には、宮崎県産業開発隊の隊員を対象とした現場見学会を開催。不動テトラや各工区の担当者が協力し、同工法の概要や特長、現場に導入している最新技術を説明した。見学会を主催した大和開発の石元拓哉氏は、「これからの建設業を担う若者に、昔とは異なる今の建設業の実態や日々進歩している最新技術を体験してもらい、建設業への興味を更に深めてもらいたい」と話す。