国土交通省は、建設キャリアアップシステム(CCUS)を経営事項審査など公共工事の評価に活用する方針を決めた。8月29日に開いた建設業4団体との意見交換で、石井啓一国交相が「経審等の評価方法の見直し」とともに、直轄工事でシステムの効果検証を行うモデル工事を実施することを表明。石井国交相はCCUSの活用で「建設産業全体の価格交渉力と競争力を向上させる」と強調した。同省では建設技能者の能力評価制度で、4段階のレベルに応じて技能者が給与を受け取れる仕組みも検討する。
石井国交相ら同省幹部は29日、日本建設業連合会(日建連)の山内隆司会長と宮本洋一副会長、全国建設業協会(全建)の近藤晴貞会長、全国中小建設業協会(全中建)の土志田領司会長、建設産業専門団体連合会(建専連)の才賀清二郎会長らと、建設業の生産性向上と働き方改革について意見を交換した。
石井国交相は意見交換の冒頭で▽新・担い手3法の運用▽i-Construction▽適正な労務費の支払い―について、各団体に協力を要請。加えて、技能者の処遇改善をさらに進めるため、CCUSの加入促進への協力も求めた。
具体的には「加入した技能者のメリットと企業のメリットをさらに高め、分かりやすく発信していくことが重要」と述べ、国交省として、公共工事の評価にCCUSを活用する方針を示した。
経審の評価方法の見直しは、9月に開く中央建設業審議会の総会で改正案を審議。直轄工事の現場では、元請けにカードリーダーの設置と技能者に建設キャリアアップカードの積極的な活用を促すモデル工事を実施し、CCUS活用の効果を検証する。
さらに、CCUSの目的が「若い世代にキャリアパスと処遇の見通しを示す」などと発言。同省では、職種別に専門工事業団体が策定する技能者の能力評価基準に、技能レベル(レベル1~4)に応じた技能者の給与の目安を盛り込むことを検討。この目安を活用して価格交渉が行われ、技能者が技能レベルに応じた給与を受け取れる仕組みづくりを検討する。
石井国交相は4団体に対し、(CCUSの)メリットを高める具体策を検討し、国交省に提案することも求めた。「i-ConstructionとCCUSが相まって、若い入職者にも資する、新しい建設産業の魅力を創造することができる」とも述べ、建設業の生産性向上と働き方改革をさらに促進していく、との並々ならぬ意欲を見せた。
■日建連・山内会長「来年度から入札時加点を」
日本建設業連合会(日建連)の山内隆司会長は8月29日、国土交通省と建設業4団体が行った意見交換で、建設キャリアアップシステム(CCUS)について「入札時の加点や工事成績への反映をまずは来年度から取り入れてほしい」と述べるなど、公共工事でシステム活用のインセンティブを高めるよう要請した。建設産業専門団体連合会(建専連)の才賀清二郎会長は「直轄工事ではカードリーダーを必ず設置してほしい」と求めた。
山内会長は、公共工事でのインセンティブを求めた他「直轄工事では全事業者に登録を義務付けることを期限を明示して予告してほしい」と述べ、政策誘導によって登録を促進する必要性を訴えた。
また、日建連では、7月末までに会員企業の協力会社の4割に当たる2万0230社、、協力会社に所属する技能者の4割に当たる31万8181人が登録済みと報告(いずれも重複カウントあり)。その上で、意見交換に参加した他の3団体に対し「来年3月末にはこの数字を報告してもらいたい」と要請した。
全国建設業協会の近藤晴貞会長は、今秋に全国9ブロックで開く地域懇談会で「CCUSをテーマの一つに加え、システムに関する要望、意見、提言などについて幅広く意見交換したい」と表明。全国中小建設業協会の土志田領司会長も「10月~12月に開くブロック会議で、前向きに議論したい」と述べた。
建専連の才賀会長は、技能者がCCUSに登録しても、元請けが現場にカードリーダーを設置しないと就業履歴が蓄積されないことを問題視し、「公共工事の現場にはカードリーダーを間違いなく設置してほしい」と訴えた。また、技能者登録を促進するため「技能者に対し、レベルごとのメリット・デメリットをはっきりと打ち出すことも必要だ」と国交省に注文した。