宮崎県は「体育館建設に係る設計業務」のプロポーザルで最優秀者に特定された石本・宮崎設計業務共同企業体の技術提案と審査講評を明らかにした。スポーツランドみやざき及び屋内スポーツの拠点となり、まちの活性化に寄与する延岡アリーナの実現に向けて、城下町の歴史や敷地の地理的特徴を捉えた景観の創出や屋内スポーツ施設の設計実績に裏打ちされた技術力、市民活動を誘発する仕掛けなどが高く評価された。
2026年開催の国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会に向けて、延岡市民体育館の敷地内に建設する体育館の基本・実施設計を委託する。新施設は2階建程度で、全体の延床面積は約1万2500m2程度を想定。県は8月7日、プロポーザルで最優秀者に特定された石本・宮崎JVと8600万円で契約を交わしている。
同社の提案では、敷地南側に建物、北側に駐車場を配置。建物部分は、メインアリーナとサブアリーナを交流の道でつなぐ同棟形式とした。既存体育館で利用を続けながら、1期工事で東駐車場にサブアリーナ(1690m2)を建設。新サブアリーナの供用後、2期工事で既存体育館の解体とメインアリーナ(3040m2)の建設を行う。
建物北側に管理所室や会議室、控え室といった管理・運営機能を集約。南側表通りに面した活動ゾーンには、トレーニング室や多目的室、スタジオなど日常的に市民活動が行われる諸室を配置して、賑わいを創出する。メインアリーナとサブアリーナに挟まれた空間を交流の道と位置付け、休憩コーナーや市民団体のスペースを設ける。
可動席を4辺に配置するアリーナは、東西2辺の可動席を移動式とすることで、客席配置パターンのバリエーションを増やし、サブアリーナへの設置も可能にするなど、様々なイベントに対応できるようにした。イベント時に使用する照明やスピーカーなどは、天井の架構に本設する部分と持ち込みに対応できるフックを用意する。
アリーナの屋根は宮崎県産スギ材の裸木造。一般製材を採用し、鉄骨造や大断面集成材に対して大幅なコスト縮減を図る。屋根構造を応力に合わせた断面形状のトラスとすることで、軽量化とコストダウンを実現。耐火構造とする必要がある床から6mまでを鉄骨造の立体トラスとし、RC造の下部構造に屋根のスラスト力を伝える。
延岡の自然エネルギーを活かすエコアリーナとして、太陽光発電及び自然採光、自然通風及び自然換気、雨水利用、地中熱利用システムを導入するとともに、LED照明やCO2濃度制御、換気全熱交換器、昼光センサー、節水型器具、高効率機器、トップランナー変圧器、BEMSの設備機器を採用し、ランニングコストの削減を図る。
災害発生時に於ける安心・安全な避難拠点及び防災拠点とするため、敷地全体を現在の地盤から1m、新体育館の1階床レベルを1.2m嵩上げすることを提案。合わせて、耐震性能を高める杭基礎のイメージ、特殊な構造によるアリーナ天井の落下防止対策、敷地全体に静的締固め砂杭工法を採用する液状化対策も提案した。
審査講評では、「配置予定技術者の資格及び実績等の技術力の評価が高く、安心して設計を任せることができる」「城下町の歴史や敷地の地理的特徴を的確に捉え、延岡に立地する体育館として個性を持った設計が期待できる」「アリーナ間に市民活動を誘発する仕掛けがあり、交流の場としての活用が期待される」などと評価された。
事業スケジュールによると、18~19年度に測量・調査等、19~20年度に施設整備に係る基本・実施設計を進めるとともに、19年度に農地転用等の手続きや造成設計も行う。既存施設の解体と合わせて造成工事を進め、21~22年度にサブアリーナ建設工事、23~24年度にメインアリーナ建設工事を行う予定でいる。