国土交通省は、現場の労働生産性の向上や品質管理の高度化につながる技術開発を支援する「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」で、2019年度の試行案件25件を選定した。公共工事の施工者やICT関連企業などでつくる異業種コンソーシアムが、各現場でデータを活用した労働生産性の向上、品質管理の高度化を図る技術を検証する。検証費用は最大5000万円を国交省が負担する。
プロジェクトの経費は、官民の研究開発投資の拡大を図るために内閣府が創設した「官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)」から総額8億円の配分を受けている。公共工事の現場で、人工知能(AI)やIoTを活用して得られる作業員や建機の動き、施工データを活用し、現場の労働生産性の向上や品質管理の高度化を図る。
19年度に試行する技術のうち、労働生産性の向上を図る技術は13件で、継続6件、新規7件の内訳。このうち、フジタとジオサーフCSでつくるコンソーシアムは、重機に搭載したレーザースキャナと自動追尾トータルステーションにより、トンネルインバート工の掘削時やコンクリート打設時にリアルタイムで3次元出来形計測を実施。日常の出来形測量を省略できるようにする。
戸田建設、ケーアイテクノロジー、建設物価調査会で構成するコンソーシアムは、共同溝で使用するプレキャスト部材にマーカーを貼り付け、施工後に3次元位置情報を取得できるように設定。出来形確認や検査の効率化を図る。
一方、品質管理の高度化を図る技術には12件(継続5件、新規7件)を選んだ。清水建設とシャープでつくるコンソーシアムは、高精度のステレオカメラで床版配筋の画像データを取得。配筋の出来形管理を省力化する。撮影データはクラウドで共有するため、遠隔地での検査に活用することもできる。
各コンソーシアムは今後、地方整備局と試行経費に関する契約を結び、現場実証に入る。国交省は、プロジェクトで得られたデータを公開することも検討する。品質管理の高度化に効果の高い技術は、監督・検査や施工管理に関する基準類を改定し、直轄工事での現場実装も促進する。
■生産性・品質の向上に成果
国土交通省は7月30日、「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」について、2018年度試行事業の報告会を開いた。18年度に革新的技術を試行した9技術について、異業種コンソーシアムの代表者が現場実証で得られた成果を報告した。
報告会の冒頭、国土技術政策総合研究所の伊藤正秀所長は「各コンソーシアムが上げた成果を他現場にも展開し、i-Constructionをさらに推進させたい」とあいさつした。
報告会では、18年度の試行事業に選ばれた33技術のうち、9技術の成果を各コンソーシアムの代表者が報告。堀口組コンソーシアムは、北海道開発局の発注工事で映像を活用した遠隔地からの現場臨場を試行。固定カメラやモバイルカメラの映像で臨場確認を行い、安全点検、社内検査、段階検査などに必要な移動時間や待ち時間を短縮できたという。
「visual-constructionによる品質管理高度化コンソーシアム」(代表・愛亀)は、画像データを使って舗装路面のクラック調査を行ったり、路面データを3次元モデルで表現することで、調査精度や労働生産性を高めた。さらに、締め固め時のアスファルトの温度管理にサーモカメラの映像を活用。舗装自体の品質の高度化を図ったとしている。