公募型プロポーザル方式で「日南市新庁舎建設設計業務委託」の候補者選定を進めている日南市は、7月18日に公開プレゼンテーション(二次審査)を行い、代表企業枠の最優秀者に株式会社山下設計九州支社を特定した。同社は今後、県内企業枠の候補者に選定された株式会社岩切設計と協議を行い、共同企業体を結成する。
経年に伴う既存庁舎の老朽化や耐震性能不足等の課題を解消するため、敷地内に新たな庁舎を建設する計画。現在の本館及び議会棟を解体後、保健福祉総合センターの東側に新庁舎を建設し、駐車場や広場等を整備する。新庁舎の想定規模は6400m2を上限とし、詳細な規模は基本設計の中で精査して決定する。
当該業務では、新庁舎建設に係る基本・実施設計業務や説明会等の開催に伴う支援業務、庁舎整備に必要な各種申請業務を行う。庁舎の構造は、免震構造の採用を軸に計画を進めるが、地質調査等の結果を踏まえて正式に決定する。履行期間は2021年3月31日まで。税込の予算額は1億2981万円としている。
事業者の選考は、代表企業枠と県内企業枠のそれぞれで実施。学識経験者や地元自治会、行政の代表らで構成する審査会が、書類審査やプレゼンテーション及びヒアリングを通じて、代表企業枠の最優秀者及び優秀者(次点者)、県内企業枠の候補者をそれぞれ選考した。代表企業枠の優秀者は株式会社梓設計九州支社だった。
市がまとめた基本計画では、全ての施設利用者が等しくサービスを享受できるとともに、安全・安心で円滑かつ快適に施設を利用できるよう、ユニバーサルデザインや利用者ニーズに考慮した▽窓口機能▽執務機能▽議会機能▽防災機能▽市民活用機能▽環境配慮機能▽セキュリティ機能―の導入を目指している。
免震構造を採用した場合の概算事業費は39億円程度。整備手法は設計・施工分離発注方式(従来方式)とする。事業スケジュール案では、19年度~20年度に基本・実施設計、20年度に既存本館及び議会棟解体工事、21~22年度に新庁舎建設工事及び外構工事を行い、22年度の工事完了を計画している。
■新庁舎はRC造3階建、敷地内に広場や交流館
代表企業枠の最優秀者に特定された山下設計は、業務の実施方針として「シビックセンターとしての魅力を高め、つながりの拠点となる日南ならではの庁舎」を提案した。新庁舎と県道を挟んで位置する文化センター及び中央児童公園が連携を取りつつ、その役割に応じた対比的な整備によって二つで一つとなるシビックセンターを創出する。
広く市民に開かれたパブリックスペースを形成するため、庁舎内に「みんなのロビー」、庁舎前面に「みんなの広場」や「交流館」といった「ひと」が集まる空間を整備し、これらを「みんなの回廊」で繋ぎ合わせ、庁舎内外で市民活動が展開できるようにする。一方で、市民に開放する機能と市庁舎のセキュリティラインを明確化する。
新庁舎に関しては、周辺の景観と調和し、市民が利用しやすい3階建てを計画。1階には市民生活部や健康福祉部、会計課の窓口部門を集約して配置し、市長室・副市長室、庁議室、総合政策部、産業経済部、建設部の執行部及び非窓口部門を2階にそれぞれ配置する。議場や委員会室等の議会機能と機械室・電算室は3階に配置する。
新庁舎の構造は、大地震後でもひび割れ等の発生を抑え、価格高騰リスクや調達・工程の遅延リスクが低いRC造+免震構造を計画。温暖多照や最多雨地域といった日南市の気候特性を踏まえ、自然光及び自然風を取り入れることができる外装デザインや屋上の断熱強化、自然エネルギー(太陽光発電・地中熱)や雨水利用を行う。
相次ぐ自然災害や社会的災害への備えも充実させる。耐震間柱やウォールガーダーにより上部構造の剛性を一層高めるとともに、液状化対策として約20m以深まで静的締固め工法を講じる。風水害及び台風等に伴う計画規模の浸水リスクや、各地で頻発する内水氾濫を配慮し、庁舎1階の床高さを前面道路+1.0mとする。