社会資本整備審議会道路分科会九州地方小委員会(辰巳浩委員長=福岡大学工学部社会デザイン工学科教授)は2月14日、国道10号住吉道路(宮崎市)の計画段階評価を行った。会合では、地域の現状や課題を踏まえた当該路線の政策目標案を示したほか、沿線自治体や関係企業、地域住民を対象とした意見聴取の方法等を審議した。
計画段階評価は、公共事業の実施過程の透明性を向上させるため、新規事業採択時評価の前段階において、政策目標を明確化した上で、複数案の比較・評価を行うもの。地方支分部局が評価を行うにあたって必要なデータの収集や整理、資料作成等を行い、学識経験者等の第三者で構成する委員会等の意見を聴き、対応方針案を決定する。
宮崎市北部に位置する住吉道路の対象地域は、県東部を縦貫する国道10号と県中央部を横断する国道219号が分岐・合流する道路交通網の結節点を有する地域。国道10号沿線の大部分は市街化区域に指定されており、複数の工業団地が立地しているほか、東海岸沿いは南海トラフ巨大地震の津波浸水想定区域となっている。
住吉道路の対象区間は、4車線の佐土原バイパスと宮崎北バイパスに挟まれた2車線の区間。交通容量を上回る2.2万台/日の交通が集中し、平日・休日ともに渋滞が発生する主要渋滞区間となっている。対象区間の平均死傷事故率は、前後区間の平均や県内国道平均と比べて高く、自動車交通及び歩行者の安全確保が課題だ。
また、対象区間沿線に於いては、宮崎テクノリサーチパークや北部工業団地等の産業拠点が立地しているが、国道10号の渋滞に伴い、沿線企業の多くが周辺の県道や市道等を利用するなど、無駄な迂回とコストが発生している。併せて、災害発生時に於ける緊急交通路や安定した救急搬送路としての機能の確保を課題に掲げる。
国道10号周辺では、市街化区域の拡大及び用途地域指定による都市機能の誘導で計画的なまちづくりが行われているが、一方で、交通環境の変化による既成市街地の衰退や新たな道路整備による無秩序な市街化も懸念される。
こういった地域の現状や課題、道路による要因を踏まえ、会合では当該道路の政策目標案として、①交通環境の改善②沿道環境の保全③信頼性の高い緊急交通路の確保④医療施設への速達性・走行性向上⑤速達性・信頼性の向上による産業の支援⑥速達性・信頼性の向上による観光振興の支援―の6項目を提示した。
また、地域の課題や政策目標案に対する意見聴取に関して、▽地域の代表者や沿線企業等にヒアリングを行う▽市役所等にオープンハウスを設置する▽地域住民から対象者を無作為に抽出してアンケートを行う▽道の駅でアンケートを行う―などの方法で実施することを確認した。次回の会合で複数の対応方針案を示す見通し。
会合ではこのほか、大分・熊本両県の県庁所在地を連絡する中九州横断道路の一部である「竹田~阿蘇」の計画段階評価も実施。これまでに示していた現道改良案と別線整備案(北ルート・南ルート)の各案に関して、延長約22㎞の自動車専用道路を整備する別線整備案(南ルート)を対応方針案とすることを示し、委員がこれを妥当とした。