建設ネット企画画像 四角 四角

厳しさ増す採用状況 人手不足が働き方改革にも影

 全国中小建設業協会(全中建、豊田剛会長)が、会員企業を対象に人材の確保・育成対策や働き方改革についてアンケート調査を行ったところ、2018年度に技術者を採用した企業は45.8%で、17年度の実績と比べて5.1ポイントダウンした。19年度に採用予定のある企業は42.0%とさらに落ち込む見込み。一方、週休2日を検討する上での課題として最も多かったのは「人手不足」。人材確保の厳しさが、働き方改革にも影を落としている実態が明らかになった。

 2240社を対象に調査。有効回答は25.9%の581社だった。資本金5000万円未満が77.8%。業種は土木が61.3%、土木・建築が29.6%、建築が7.1%。

 18年度に技術者を採用した会員は45.8%で、54.2%は採用がなかった。採用があった会社でも、採用人数は「1人」が65.8%と大半を占めた。「2人」が21.1%、「5~9人」が6.8%、「3人」が6.3%と続いた。

 技能者を採用した会員も25.7%あった。この中でも採用人数は「1人」が84.2%と大半を占めた。

 回答企業の女性技術者の採用人数の合計は17年度が35人、18年度が36人、19年度が37人(予定)と横ばいで推移。女性技能者は17年度が11人、18年度が8人、19年度は12人(予定)となっている。

 また、18年度の採用者の年齢別の割合では、10~20歳代は技術者の57.8%、技能者の26.3%にとどまり、中高年の採用も少なくなかった。

 新規採用者の採用方法(複数回答可)は、大学・高校・専門学校などの新卒採用(回答社数計652社)が約半数を占めたが、ハローワーク(327社)や縁故(228社)も少なくない。

 17年度に離職した社員は技術者513人、技能者264人の計777人。離職者の年齢別の割合は、10~20歳代が30.8%と最も多かった。離職までの年数に関しては、1年以内の20.5%を含め、56.1%の企業が3年以内と回答した。

 離職の主な理由(複数回答可)は、「本人が職場に不向きと判断」(回答社数269社)が最も多かった。以下、「人間関係(社内・社外)」(153社)、「健康上の理由」(132社)、「休暇が少ない」(131社)、「給与への不満」(125社)が続いた。

 離職前の教育など人材確保の取り組み(複数回答可)では、「OJT(職場での教育)」(199社)が最も多く、「指導役と相談させた」(176社)、「何もしていない」(167社)、「合同研修会へ参加させた」(157社)が続いた。

 担い手確保のための取り組み(複数回答可)では、「資格取得を支援」(408社)が最も多かった。以下、「仕事の内容・資格・勤務年数に応じた賃金体系」(203社)、「インターンシップの活用」(192社)、「毎年計画的に若い世代を採用」(181社)が続いた。

 週休2日では、「4週8休」は8.1%にとどまり、工程に合わせた「年間カレンダーで実施」が63.8%と最も多かった。このほか「4週6休」が20.8%、「4週7休」が4.0%、「4週5休」が3.3%だった。

 週休2日を検討する上での課題(複数回答可)については、「人手不足」(377社)が最も多く、「給与制度の改善」(185社)、「発注の平準化」(164社)が続いた。

 時間外労働のうち直近1年間の実態については、延べ1万1853人のうち45.2%が「年間120時間以下」だった。改正労働基準法による上限規制を超える「年間721時間以上」は3.2%だった。

 時間外労働が最も多い3月の実績では、8.3%が単月の上限を上回る101時間以上の時間外労働を行っていた。

 時間外労働の発生原因(複数回答可)では、「煩雑な書類作成」(401社)、「人手不足」(328社)、「自然条件」(248社)などが目立った。

 発注者に求める取り組み(複数回答可)では、「提出書類の簡素化」(274社)、「適正工期の発注」(228社)、「発注の平準化」(226社)、「工期の柔軟な変更」(206社)、「労務単価の引き上げ」(193社)が多く挙がった。

 建設キャリアアップシステムについては。70.9%が「知っている」、29.1%が「知らない」と回答した。同システムへの事業者・技能者の登録では、「登録済・予定である」が14.5%、「登録を検討している」が66.0%、「登録の予定はない」が19.5%だった。

■担い手3法、市町村の対応の遅れ指摘

 全国中小建設業協会が行った会員アンケートでは、発注機関の改正入札契約適正化法など「担い手3法」への対応状況についても聞いた。発注機関の予定価格や工期の設定などについて「適正でない」とする割合が、市町村の工事を中心に高く、歩掛りの見直しや、適正な工期設定、発注の平準化を求める意見が多かった。

 「予定価格の設定」について「適正でない」とする回答は、国と町村に対しては50%台だったが、都道府県と市に対しては60%を超え、平均63.2%だった。「歩掛りの見直し」を求める意見が多かった。

 「積算基準」について「適正でない」とする回答は平均75.8%。国が最も低く66.1%、市が最も高く81.2%だった。「資材・価格・単価を見直してほしい」という意見が目立った。

 「工期の設定」について「適正でない」という指摘は平均80.5%。最も低い国でも71.5%で、市では84.5%に上った。「発注の平準化」や「速やかな発注準備」を求める意見が多かった。

 設計変更についても、「適正でない」とする回答が平均79.7%と高く、特に市については85.3%に上った。「監督によって対応が異なる」ことなどが問題点に挙がった。

 低入札基準価格の設定については、「適正である」とする回答が国に対しては56.0%、都道府県では51.6%と過半数を占めた。一方、市は「適正でない」が61.2%、町・村は58.7%だった。「低入札価格を引き上げてほしい」との回答が目立った。

 最低制限価格の設定についても、地方自治体に対して「適正でない」とする指摘が過半数を占めた。

 担い手3法の浸透に関して「担当者まで浸透している」という回答が国については38.5%あったが、都道府県は20.4%、市は14.5%、町・村は18.8%と低かった。