国土交通省は、建設業許可要件に社会保険加入を追加することに伴い、元請けによる加入確認・加入指導の適正化を図る。社会保険への加入に関して元請けが下請け・労働者を指導するケースもあるため、2019年度にセミナーを開き、加入すべき保険を改めて周知するとともに、建設キャリアアップシステムを活用した加入指導や加入確認の合理化を促す。法定福利費に関する認識が不十分な元請けに請負代金内訳書の作成方法を学んでもらい、法定福利費を適切に支払う意識も高めてもらう。
国交省は、建設業の社会保険加入対策が始まって5年が経過したことを節目として、建設業法を改正して社会保険加入を許可要件化することを検討している。
加入率は着実に改善しているものの、法令上認められている国民健康保険組合に加入する企業に協会けんぽへの加入を求めるなど、誤った加入指導が行われていたり、社会保険加入の原資である法定福利費が支払われない、といった声は依然として強い。
許可要件化で対策を強化する一方、国交省は社会保険加入を定着させる環境整備にも力を入れる方針で、2019年度の概算要求に関連経費2500万円を盛り込んだ。
具体的には、社会保険制度に関するセミナーを開き、各現場で加入指導を行う元請けに対し、企業規模・形態で異なる加入すべき保険を改めて周知する。さらに、建設キャリアアップシステムでは、真正性を確保した労働者単位の加入状況が確認できるため、システムを活用した加入確認や加入指導の合理化も普及させる。
元請けが適正に法定福利費を支払う環境整備にも取り組む。同省が行った調査では、発注者から法定福利費を受け取っているか不明だと回答する元請けが、都道府県工事で28.9%、市区町村工事で37.7%いた。
国交省は、元請けが法定福利費の算出方法を認識していないことが、下請けに法定福利費を適正に支払わなかったり、不当に減額する要因の一つになっているとみている。
19年度に開くセミナーでは、法定福利費や労務費を内訳明示する請負代金内訳書の作成方法も指導。17年度の改正により、建設工事標準請負契約約款では、元請けが発注者に内訳書を提出することを求めており、この中に適正に見積もった法定福利費を盛り込み、下請けに適正に法定福利費を支払う意識を高めてもらう。