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プレキャスト製品、大規模構造物で導入促進 国交省

 国土交通省は、コンクリート工の生産性を高めるため、大型構造物へのプレキャスト製品の導入を促進する。接合部の技術基準の整備や、部材の規格化を進め、プレキャスト製品の採用率が低い、内空断面積約10m2以上のボックスカルバートや、高さ3m以上のL型擁壁を目安にプレキャスト製品の導入を進める。2018年度末に「土木構造物標準設計ガイドライン」を改定し、こうした考え方を盛り込む。

 i-Constructionの3本柱の一つに位置付けられているコンクリート工の生産性向上に向けては、16年度以降、プレキャスト化と現場打ちコンクリートの双方で技術基準の整備などを進めている。このうちプレキャスト製品の作業効率については、L型擁壁(高さ5m)で現場打ちの5.2倍となるなど有効性が確認されている。

 しかし、プレキャスト製品は小規模な構造物では85%以上で採用されているが、規模が大型になると現場打ちの採用率が高まる傾向にある。プレキャスト製品の接合部の技術基準が未整備だったり、運搬上の制限があるためだ。

 接合部の技術基準については、プレキャストコンクリート構造物に適用する「機械式鉄筋継手工法」のガイドラインを土木研究所が近く策定する。プレキャスト製品を導入する場合、鉄筋継手が一断面に集中する特有の課題があり、ガイドラインで耐荷性状(耐力、剛性、ひび割れ挙動)を実現できる条件を示す。

 一方で、設計段階で一定規模以下の構造物(ボックスカルバート、擁壁工)にプレキャスト製品を採用する際、直接工事費だけでなく、仮設費を含めて経済性を評価する検討手法も確立する。現場打ちとの比較に積算価格と地域性を考慮できるようにする。

 土木構造物の生産性向上を図る目的で、1996年に策定された「土木構造物標準設計ガイドライン」を改定し、こうした考え方を盛り込む。ガイドラインには、16年度以降に制定した▽機械式鉄筋継手工法▽機械式鉄筋定着工法▽流動性を高めたコンクリート▽ハーフプレキャスト▽埋設型枠▽プレハブ鉄筋―などの新技術も反映させる。

 2019年度には、ガイドラインに盛り込んだ設計思想を実務レベルに落とし込んだ「土木構造物設計マニュアル」も改定する方針だ。

■生コン情報の電子化、直轄4~5件で試行

 国土交通省と日本建設業連合会(日建連、山内隆司会長)は、現場打ちコンクリートの生産性を高めるため、生コン情報の電子化を試行する。日建連の会員企業が受注する直轄工事4~5件で、生コンの出荷や打設状況をクラウド上で関係者が共有。「戻りコン」の削減に加え、出荷側と施工側の伝票作成時間の削減、発注者の監督・検査の効率化を図る狙いがある。

 生コンの出荷・到着・打設などの状況は電話・無線で伝達されるため、生コン車の配車が最適化されず、規定時間を超過した「戻りコン」が発生してしまう。また、工事終了後の伝票整理は手作業で行われるため、残業による長時間労働につながっているとの指摘もある。

 試行工事では、生コン工場が管理する出荷システムと、施工会社が保有するコンクリート打設管理システムをクラウド上で共有し、出荷側と施工側のコミュニケーションを円滑化。従来方式と比較し、電子化する際の課題を検証する。発注者の監督官らもコンクリートの各種試験を動画でリアルタイムで確認し、立ち会い業務を簡素化する。

 試行工事の結果は、国交省や関係団体でつくる「コンクリート生産性向上検討協議会」に19年度末にも報告し、本格導入に向けた検討に生かす。JIS規格がある伝票の電子化も検討し、将来的なペーパーレス化を目指す。