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大淀川水系河川整備計画を変更 洪水・内水対策など推進

 国土交通省九州地方整備局と宮崎・鹿児島の両県は、大淀川水系に於ける概ね30年間の整備内容を示した「大淀川水系河川整備計画」を変更した。計画対象区間は、大淀川水系の国管理区間及び両県管理区間。基準地点である柏田地区の目標流量を1万0500m3/s(洪水調節後流量9100m3/s)と定め、洪水対策や内水対策、高潮及び地震・津波対策のほか、施設の能力を上回る洪水を想定したソフト対策を一体的に推進する。

 平成18年3月の前計画策定以降に発生した東北太平洋沖地震による津波被害や関東・東北豪雨による浸水被害、平成17年9月の台風14号による宮崎市街部の洪水被害に加え、水防法等の改正を踏まえた平成28年7月の大淀川水系河川整備基本方針の変更など、河川を取り巻く社会状況の変化に対応するため計画を変更する。

 変更計画では、河川整備の基本理念に「多様でより豊かな自然環境を未来に継承し、より安心して暮らせる流域の個性ある活力、歴史・文化をさらに発現する大淀川」を掲げた。安全・安心や川と人とのふれあい、清浄な水質、自然環境との調和を柱とし、地域住民及び関係機関と連携を図りながら各種施策を推進する。

 河川の整備にあたっては、「洪水、津波、高潮等による災害の発生の防止又は軽減」「河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持」「河川環境の整備と保全」のそれぞれの目標が調和しながら達成されるよう、適正な本支川、上下流及び左右岸バランスを確保しつつ整備を進め、洪水等による災害に対する治水安全度の向上を図る。

 洪水、津波、高潮等による災害発生の防止または軽減を図るため、堤防整備、河道掘削、遊水地整備、既設ダムの有効活用等を実施する。維持管理を考慮した設計・施工とし、併せて工事中の濁水・土砂の流出防止を図るとともに、多様な動植物が生息・生育・繁殖する環境や良好な景観との調和に配慮するよう努める。

 目標流量を安全に流下させるため、堤防高や断面が不足している地区等において堤防整備(築堤)を実施するとともに、河口部では洪水に加えて高潮及び津波からの被害の防止または軽減を図るため、必要となる堤防整備を実施する。あわせて、川幅が狭く、流下能力が低い地区等では、川幅を広げるための堤防整備(引堤)を実施する。

 また、洪水時の降雨及び河川水の浸透により堤防(堤体及び基礎地盤)が不安定化することを防止するとともに、洪水時の流水の侵食作用により堤防や河岸が不安定化あるいは流出することを防止するため、堤防や河岸の耐浸透機能及び耐侵食機能について安全性の照査を行い、優先度を検討しながら必要なパイピング対策を講じる。

 一方、必要な河道断面積が確保されていない区間に於いては、河道掘削や樹木伐開等を実施。実施にあたっては、掘削形状等に十分配慮するとともに、低水路から高水敷までを緩やかな勾配で掘削するなど、水際の多様性の創出に配慮する。掘削土は堤防整備や関係機関との調整による有効活用に努める。

 平成17年9月洪水と同規模の洪水を安全に流下させるため、大淀川上流部及び下流部に遊水地を整備するとともに、既設の岩瀬ダムを有効活用して洪水調節機能を増強することも調査・検討する。関係機関等と調整を図りながら、諸元等の詳細を決定する。

 洪水流下の支障となっている橋梁のうち、堤防整備と一体となって改築を行う必要がある▽乙房橋(都城市)▽今平橋(前同)▽鶴崎橋(前同)▽巣立橋(前同)▽溝之口橋(曽於市)―に関しては、各橋の施設管理者と連携して改築を実施する。

 新たに内水対策の必要性が高まった地区等では、被害の規模や浸水頻度、土地利用状況等を勘案し、発生要因及び処理方策について調査・検討を行い、必要に応じた対策を講じる。また、大規模な地震が発生した場合でも河川管理施設の機能を確保するため、新別府川の樋門耐震化や樋門自動閉鎖化等に取り組む。

 一方で「施設では守り切れない大洪水は必ず発生する」との考えに立ち、越水等が発生した場合に決壊までの時間を少しでも引き延ばすよう、堤防構造を工夫する危機管理型ハード対策にも取り組む。必要に応じて、迅速な復旧活動に必要な堤防管理用通路の整備や高速道路等との連続性の確保、水防拠点の整備等も実施する。

 これらの河川整備と合わせて、河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持や多様な動植物の生息・生育・繁殖環境の保全と創出、良好な水質の保全、良好な景観の維持及び形成、人と河川の豊かな触れ合いの場の整備・保全に努める。